ワカヒメと百済の匠(たくみ)
この年、吉備上道臣タサ(田狭)は、宮殿に参上していて、仲間にさかんに妻のワカヒメ(稚媛)を自慢していました。
「天下の麗人も、私の妻には敵うまい。美しくおおらかで、様々な美点が備わっている。華やかでうるおいがあり、表情が豊かだ。おしろいも塗らず、髪の香油もつける必要がない。はるか昔にも類を見ない、当代一の美人だ」
天皇は、耳を澄まして遠くから聞いて、心ひそかに喜びました。
そうして、自らワカヒメを求めて、妃にしようと思い、タサを、任那(みまな)の国司※1に任命しました。
しばらくして、天皇は、ワカヒメを召し入れました。
タサとワカヒメの間には、エキミ(兄君)、オトキミ(弟君)という子がいました。
タサは、すでに任那の任地に赴任していましたが、天皇が自分の妻を召し上げたことを知り、助けを求めて新羅に入ろうと思いました。
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