第十三回】丘の湯とぺペロンチーノ (前編)

多摩丘陵の丘の上にある、遊園地よみうりランド。そこに入浴施設が併設されていると知り、この機会に訪れることにした。三鷹住まいの久住さんにとって、よみうりランドは案外近い。京王線「京王よみうりランド駅」を下車し、丘の上までゴンドラ散歩。「孤独のグルメ」でお馴染みの久住昌之氏がおくる、「風呂」×「グルメ」の痛快エッセイ。

 よみうりランドは、多摩丘陵の丘の上にある。敷地が広大なので、年々いろいろなアトラクションが増えるのは、東京ディズニーランドよりずっと昔からのことだ。
 でも、まさか浴場施設までできているとは思わなんだ。それが「丘の湯」だ。ボクは、よみうりランドに入場して、子供を遊ばせておいて大人が入るのか、遊んだあとに家族で入るのかと思っていた。
 そしたら、丘の湯はよみうりランドに隣接して入るが、園外のスーパー銭湯だった。でもよみうりランドの敷地内ではあり、運営もよみうりランド。
 朝十時からやっている。それは行くしかない。
 朝、八時半に起きて、準備して出かけた。
 よみうりランドには、三鷹の自宅の近くからバスで調布に出て、京王線で「京王よみうりランド」駅で下車する。調布から三駅。案外近い。

 よみうりランドは、子供の頃から父の車で連れてきてもらった、なじみ深い遊園地だ。今調べたら一九六四年開園。その当時から来ている。ボクは小学校一年生ぐらい。車で行くと、土日だったからいつも多摩川の橋が渋滞していて遠いイメージがあった。こうしてバスと電車で来たらすぐだ。
 京王よみうりランド駅を出ると、すぐ直営のゴンドラ「スカイシャトル」があり、これで一気に丘の上まで上がり、さらに園の上空を横切って入口ゲートそばまで行く。
 しかし、このゴンドラは風の強い日は運転停止になる。そうすると、ゴンドラの下の階段道、その名も「巨人への道」を足で上らねばならない。なんじゃその名前は。登ったところに「読売ジャイアンツ球場」があるのだ。
 一度、親戚の子供を連れて行ったとき、止まっていて、やむなく巨人への道を上ったが、結構ハードで、汗びっしょりになった。そこからゲートまで徒歩でさらに十分ぐらいかかる。大変。阪神ファンや、アンチ巨人の野球ファンには屈辱的な階段だろう。
 丘陵の向こう側を小田急線が走っていて、「読売ランド前」駅からバスが出ている。風の強い日は、小田急線で行ったほうがいい。汗をかいて学んだ。
 
 でも、この日はちゃんとゴンドラは動いていた。片道三〇〇円、往復五〇〇円。もちろん往復購入。これに乗って丘の湯に行く人は、いるのだろうか? いても少なそうだ。
 ゴンドラがずいぶん新しくなっている。が、平日の朝十時過ぎ、並んでいる人もいない。十人ぐらい乗れるのに、ボクひとり。変な感じ。どこの席に乗るべきか迷う。なんとなく真ん中辺に前を向いて座る。すぐにゴンドラはふわりと上昇する。かなりの急角度。いきなりかなりの高度。
 後ろを振り向いたら、おお、武蔵野台地がドーンと広がっている。これは後ろを向いて乗ったほうがよかったか。いや、帰りに見ればいいか。循環式ロープウェイなので、隣を下りのゴンドラがすれ違って行くが、やはり誰も乗っていない。と思いきや、満員のが降りてきた。全員スーツ姿のサラリーマン。声は聞こえないが、みんな笑顔なのは、仕事なのに朝からこんなのに乗って、楽しいからだろうか。
 丘の上まで到達すると、すぐに読売ジャイアンツ球場の緑の芝生が見えた。二軍が練習をしている。松井秀喜も、高校を卒業してすぐは、ここで練習したのだろうか。
 白いインド風の寺院が見えた。昔からあるが、子供心に遊園地と違和感があった。こういうものや日本庭園があるのが、不思議だった。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
ふらっと朝湯酒

久住昌之

三度TVドラマとなることが決定した「孤独のグルメ」の原作者久住昌之が、新たに提案するのが“ふらっと朝湯酒”。その名の通り、朝からお風呂入って一杯飲るという試みを、やってみようというエッセイである。朝から飲むからって、♪朝寝朝酒朝湯が大...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません