やる気を引き出すには、ほめることが大事だとよく言われます。みなさんも上司や取引先からほめられてモチベーションが上がったという経験があることでしょう。ほめ上手な人は、社内外問わず誰からも好かれます。一方、自分に部下や後輩ができたときは、ほめるだけでなく、注意したり叱ったりしなくてはいけない場面も出てきます。
今回は、ほめるときと叱るときのコミュニケーションについて解説していきます。このふたつは一見真逆にみえますが、実は合わせ鏡の関係。叱るときにも「ほめ」が必要になってくることがあるのです。のちほど詳しく解説しますが、ほめ上手と叱り上手になれれば、あなたの好感度はぐんぐん上がっていきます。
目上の相手をほめるときは、能力に言及しない
ではまずは、ほめるときについて考えていきましょう。「○○さんがあなたのことを、こうほめていたよ」など、第三者を引き合いに出すといった心理テクニックは有名ですが、同僚や後輩をほめるときには「この資料よくできてるね!」「さっきのプレゼン良かったよ!」などストレートにほめると喜ばれます。
さらに「変化」について言及すると、ほめ上手に一歩近づくことができます。たとえば「いいプレゼンだったね!1ヶ月前もさすがだなと思ってたけど、さらに上手になっている」といったほめ方です。そうすると、相手は「わ、この人はずっと僕のことを見ててくれてたんだな!」と嬉しくなります。
しかし、目上の人をほめたり尊敬の気持ちを伝えたりするときには注意が必要です。なぜなら、言葉選びや表現を間違えると失礼になりかねないからです。
たとえば、上司や先輩が作成したプレゼン資料が素晴らしい内容だったとします。その時、「さすが◎◎さん、書類作成うまいですね! 場数踏んでいるだけのことはありますね」とほめたら、相手はどんな気持ちになるでしょう?
純粋なほめ言葉として受け取ってくれる人であればいいのですが、なかにはムッとしてしまう人もいるはず。なぜならこのほめ言葉は、「相手の能力を評価」しているからです。基本的に、評価(ジャッジ)とは目上が目下に対して行うことです。ですから部下から「よくできた」とほめられると、たいていの人は面白くありません。ほめられたことよりも、「格下扱いされた」ということが引っかかり、素直に喜べないという人が多いのです。
では、どうすればいいでしょうか?
目上の相手をほめるときには、能力には言及せず、「憧れ」「うらやましい」というスタンスでのぞむのが王道です。
「この書類、すごいですね。どうやったら作れるんですか。教えてください!」
このようにあくまで下の立場からほめそやします。気分を良くした相手が何かしら語ってくれたら、「わー、そうなんですね。すごくいい情報をありがとうございます!」「助かりました。あとで調べてみます」とお礼で締めくくります。「ほめて」「教わって」「お礼を言う」。この3点セットを多用することで、相手はあなたに好意を持ちます。
さて、評価しないように気をつけるあまり、とっさに言葉が出てこないという場合もあるかもしれません。「上から目線に聞こえちゃうかな」「偉そうに思われたらイヤだな」と言葉に詰まってしまったときには「ポジティブなリアクション」で乗り切るという方法もあります。
たとえば、先輩に書類を見せられたときには、「わぁ!」「おお!」と驚いてみせる。もう、これだけで「すごい」と思っていることが伝わります。明るく笑顔でオーバーリアクションする。それだけで、相手を尊敬しほめたたえる気持ちは伝わるのです。
叱るときは、改善案まで明示する
では、相手を叱らなくてはならない場面ではどうすればいいでしょうか。後輩に仕事のミスがあったことを伝える必要があるけれど、どう伝えたらいいか悩ましい。下手な言い方をして反発されたり、うらみを買ったりするのは避けたい……と悩んでしまうかもしれません。
まず、一番やってはいけないことは、感情的になることです。謝るときは少しエモいくらいが伝わると書きましたが(第5回参照)、叱るときは逆効果です。
「なんでこんなミスするんだよ!」「おいおい、マジかよ!」などと感情的になると、相手は萎縮してしまうか反発を感じるだけで、そのあとのあなたの言葉が耳に届かなくなります。基本的には、相手のミスを「叱る」というよりも、冷静に「指摘する」というスタンスが重要です。
ここで気をつけたいのは、「指摘」だけで終わらず、改善案まで明示するということ。
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