断るのが苦手で、内心では「断りたい……」と思いながらも引き受けてしまう人がいます。じつは僕自身も、断るのはだいぶ苦手です。相手の気持ちを傷つけたくないし、悪者にもなりたくない。そうなるぐらいなら、少々無理をしてでも「やります!」と答えてしまいそうになる。
でも、許容範囲を超え、周囲に迷惑をかけてしまっては元も子もありません。そこで編み出したのが、こんな断り方です。
相手がどんなタイプでも通用する断り方
まずはお礼を言います。たとえば、「お声がけありがとうございます」「誘ってくれてありがとうございます」といった具合。このとき、それが魅力的なオファーかどうかは一切関係ありません。自分を思い出し、声をかけてくれたこと自体がとてつもなくありがたい。そういう気持ちで、感謝の気持ちを伝えます。
次に「依頼に応えられない理由」を具体的に伝えます。「ちょっと先約があって」「仕事が詰まっていて」などとぼかすのではなく、「○○さんのプロジェクトにがっつり入っていて」「プレゼン前で月末まで身動き取れなくて」というように、ハッキリ伝えます。ヘンにごまかすと、不誠実な印象を与えます。理由を明確にし、率直に「お引き受けできません」と伝えるほうが、相手も納得しやすいのです。
ここで気を抜かずに続いて、いかに自分が残念に思っているかということを、強調します。相手からすれば、ある程度引き受けてくれるだろうと見込みがあるからこそ、声をかけているはず。それが断られたショックや当てが外れた不快感を少しでもやわらげるために、「残念です」「本当は引き受けたかった」という気持ちが伝わるようひと言フォローします。
そして、最後は未来に目を向けます。「また今度ぜひ!」「またご一緒できる機会を楽しみにしています」とポジティブな言葉で、明るく締めます。
丁寧に断ろうとするあまり、くどくどと理由を説明し、必要以上に重たい雰囲気や大仰な対応をすると、かえって相手の気持ちに負担をかける可能性があるためです。途中がどんなにくどくどしい言い訳でも最後がカラッとしていると、後味が悪くなりづらいという効果もあります。
なぜここまで手間をかけて断るようにしているかというと、相手が何を考えてるか分からないから。想像しきれるものではないから。
生真面目でプライドが高い人が相手の場合には、とにかく「申し訳なさ」を全面に押し出すのが効きます。一方、「とにかく理由さえ分かればそれでいい」というさっぱりした人もいます。そうかと思えば、そっけなく断られると途端に不安になってしまう人もいれば、深刻な雰囲気自体が苦手な人もいます。
だからこそ、僕は断り文句の中にこの「お礼」「引き受けられない理由」「申し訳なさ」「明るさ」という4つの要素を盛り込んでいます。相手がどのタイプかはわからないけれど、4つのうちどれかは刺さるだろうと考えているのです。
帰り際に上司に呼び止められたときは
ただ、この方法は「社内で上司にちょっとした作業を打診されたが、正直言って断りたい」といったカジュアルなシーンで用いるには、丁寧すぎるのが難点です。
終業前、そろそろ帰ろうかなと思っていたら、上司に呼び止められ、「この書類、お願いできないかな」と聞かれたとしたとします。本音を言えば、「今言うなよ……」だし、「できません」と断りたい。そんなとき、取るべき行動はたったひとつです。