仕事の味方は「言い方ひとつ」で手に入る

ビジネスの場面で重視されるコミュニケーション能力。普段から上司や同僚、取引相手など周囲の人たちと良好なコミュニケーションがとれていれば、仕事は抜群に進めやすくなります。この連載では、20代のみなさんに向けて、「ものを頼むとき」「断るとき」「謝るとき」などのシチュエーションごとに、味方をふやすコミュニケーションのメソッドを8回にわたって紹介します。

恵比寿で昼食をとっていたときのことです。近くに座っていた会社員数名が、新入社員の噂話をはじめました。

「彼は見どころがあるよね」
「きっと、大化けするんじゃないかな」
「うん。きちんとコミュニケーションがとれるからね」

先輩社員たちは、新入社員たちをどのようなポイントで評価しているのでしょうか。興味深いことに、「頭が切れる」「仕事が早い」「タスク管理が完璧」といった能力やスキルをほめている人は誰ひとりとしていませんでした。ひたすら、「コミュニケーションがとれる」と、ほめちぎっていたのです。

なんだか不思議な褒め言葉です。一方、「コミュニケーションがとれる・とれない」は、こんなネガティブな評価とともに登場することもあります。

「学歴は高いかもしれないけど、コミュニケーション能力がちょっと……」
「頭の回転が早いのはわかるけど、コミュニケーションに問題があるんだよね」

どんなに優秀でも、「コミュニケーションがとれない」とみなされると、それを理由にチームや組織に居場所がなくなってしまうということも珍しくありません。

なんだか曖昧な評価基準だなと感じた人もいるかもしれません。“コミュニケーションがとれる”だなんて、単なる主観じゃないかと。実は、それこそが、コミュニケーションの面白さであり、難しさでもあります。

コミュニケーションは「相手がどう思ったか」がすべてです。いくら「自分はそんなつもりじゃない」と主張しても、相手に伝わってなければ、コミュニケーションは成立していません。

さらに、ビジネスにおけるコミュニケーションは「こちらの意図を過不足なく伝え、相手が理解し、動く」までがワンセットです。どんなに素晴らしいプレゼンテクニックを駆使したとしても、相手の気持ちが動かず、行動に結びつかなければ、そのコミュニケーションは失敗です。

ビジネスコミュニケーションは恋愛より簡単

とはいえ、ビジネスにおけるコミュニケーションは決して難しいものではありません。なぜなら、目指すべきゴールが明確だからです。

これがたとえば恋愛のコミュニケーションとなると、一筋縄ではいきません。まだ好きかどうかもよくわからない者同士で一緒の時間を過ごし、ふわふわと楽しい会話を終わりなく続け、「今日のデートは楽しかった」「なんだか気が合いそう」「この人のことが好きかも」という気分にお互いなったり、全然ならなかったりする……。あらためて文字にしてみると想像以上に漠然として、「恋愛なんて面倒くさい」と嘆きたくなる人の気持ちもわかります。

ビジネスの場合はもっとシンプルです。ぼんやりと「仲良くなりたい」わけではなく、社内外の人と友好な関係を築き、仕事をスムーズに進めたいという目的がある。どんなにプロ野球の話で盛り上がっても、不利な条件での契約を押しつけられていては話にならない。

ビジネスにおけるコミュニケーションの目的は「社内外を味方につけ、仕事を思い通りに進めること」。そのためにハートをがっちりつかむ必要があるのです。

ハートをがっちりつかむというと、昔気質(むかしかたぎ)のウェットなコミュニケーションを想像する人もいるかもしれませんね。とにかく上司や先輩の言うことに「はいはい」と同意し、取引先の誘いは断らず、遅くまで酒席につきあうのが「新人のかがみ」だとされた時代がありました。互いの胸の内をさらしどっぷりと仲良くなるほど、信頼関係が深まり、仕事もうまくいくと誰もが信じていたのです。

しかし、時代は変わりました。20代のみなさんの多くは、「プロフェッショナルとして効率よく働き、やるべきことをやり終えたらサッと帰り、仕事とプライベートをきっちり分ける」という働き方を理想としていることでしょう。仕事相手とは文字通り、“ビジネスライク”な関係でいたい。必要以上に踏み込んできてほしくない……。

確かに、プライベートを犠牲にし、ウエットなコミュニケーションに身を沈める必要はありません。とはいえ、ドライ一辺倒では人の気持ちは動かせないのも事実。なぜなら、仕事はチームプレイだからです。大学時代までは、気の合う仲間だけを選び、付き合うこともできました。社会人になると、そうはいきません。まったく気の合わない相手や、自分とは価値観がちがう世代とも同じチームメンバーとして働かなくてはいけない。

なるべく人と接することが少ない職種を選んだとしても、人との関わりをまったくゼロにはできません。しかも、他人は必ずしも理屈やルールに従って動くわけではないのです。同僚だからといって、協力してくれるわけではありません。

では、どうすれば、プライベートな時間を削らずに効率的に周囲を味方につけることができるのでしょうか?

味方は「言い方ひとつ」で手に入る

大切なのは、相手の心の動きを理解したうえで、最も効果的な「言葉遣い」を心がけることです。伝え方や物言いひとつで、相手が受け取る印象はガラリと変わります。

関わる人が次々に味方になり、あなたの仕事がうまくいくよう、応援してくれる。失敗したとしても、全力でフォローしてくれる。そんな環境が「言い方ひとつ」で手に入るなら、なんとコスパがいいでしょう。それこそ効率的な働き方だと思いませんか?

この連載では、20代のみなさんに向けて、「頼みごとをするとき」「断るとき」「謝るとき」などのシチュエーションごとに、味方をふやすコミュニケーション・言葉遣いのメソッドを紹介します。

相手の心情がどのように動くのか、その心理メカニズムが理解できると、言葉選びもおのずと変わります。また、相手のキャラクターや関係性によって、いくらでも応用できるようになります。こうなると、向かうところ敵なしです。

連載を読み終える頃には、社内外から一目置かれる「コミュニケーション上級者」に近づいていることでしょう。コミュニケーション上級者は周囲を頼るのも、ことを荒立てずに断るのも上手です。自分の意見を感じよく伝える一方、叱られ上手でもあります。ほめることで相手のやる気を引き出すのも得意なら、日々のちょっとした雑談も気が利いているのです。

そんな芸当ができるのは、生まれつき才能がある人だけだろうとあきらめるのは早計です。コミュニケーションは、ゴルフやテニスなどと同じく、正しいフォームを学んで練習すれば、必ずうまくなります。コミュニケーションに苦手意識があるという人も心配無用です。

では次回からさっそく、具体的なシチュエーションごとに、味方をふやすコミュニケーションのメソッドを紹介していきます。

<今回のまとめ>
・コミュニケーションは「相手がどう思ったか」がすべて

・相手の心の動きを理解したうえで、最も効果的な「言葉遣い」を心がけることが大切

・場面に応じた適切な物言いができるようなれば、おのずと味方はふえる

イラスト:ウィスット ポンニミット


この連載をもとにしたスマート新書が
4月1日に発売されます。
Amazonで予約受付中

目次
第1章 仕事の味方は「言い方ひとつ」で手に入る
第2章 ものを頼むときには、ストレートかつフェアな言い方で
第3章 断るときには、先にやる気を見せておくと角が立たない
第4章 自分の意見を通したいときは、まずは相手の意見を肯定する
第5章 謝るときには、話の順番と伝え方に細心の注意を払う
第6章 ほめ上手と叱り上手は、誰からも好かれる
第7章 雑談は、おもしろいことを言おうとしなくてもいい
第8章 ビジネスコミュニケーションの基本を総まとめ!


お金のことを語るのは、なんとなくカッコ悪いかも?という世の中の風向きを、
ケロッと変えていく投資情報メディア、日興フロッギー


この連載について

社内外を味方につけるコミュニケーション入門

五百田達成

ビジネスの場面で重視されるコミュニケーション能力。普段から上司や同僚、取引相手など周囲の人たちと良好なコミュニケーションがとれていれば、仕事は抜群に進めやすくなります。この連載では、20代のみなさんに向けて、「ものを頼むとき」「断ると...もっと読む

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