第29回】インターネット買い出し紀行

「Amazon」の日本上陸によって、ネットでの買い物が一般的となった近年。街での「お買い物」を楽しんでいた岡田育さんも今ではすっかりネットで買い物をすることに抵抗がなくなりました。そんな岡田さんがどっぷりとハマッてしまったのがeコマースサービス「Etsy」。ソーシャルメディア的な手法をうまくとりいれ、急成長中のサービスですが、岡田さんが「Etsy」に夢中になっている理由は「pin」でも「LIke」でもなく……。いくさんのインターネット買い出し紀行、あなたものぞいてみませんか?

 オンライン書店「Amazon」が日本上陸したときのことを憶えているだろうか。私は忘れている。2000年秋のニュースだそうだ。出版関係者は再販制度がどうとか大騒ぎしていたけれど、「インターネットで本が買える」サービスならそれ以前からあったし、黒船襲来と言われようが、私はすぐにはピンとこなかった。

 「だって本なんて、街の書店で買えばいいんじゃないの? 立ち読みもできるし」……2000年の自分のことなんてなかなか思い出せないが、この感覚だけは鮮明に憶えていて、今となってはすごく懐かしい。あの頃の私にとって本や雑誌は、洋服や靴と同じように「お買い物」の対象だった。街へ出かけてそれを眺め、熟慮の末に買って帰る行為自体が、人生をウキウキさせるものだった。

 ネット購入なら玄関先まで届けてくれると言われても、むしろ配達日時を指定されて家でジリジリ待つ時間が惜しかった。休日は街でのお買い物に忙しい。ふわふわした軽いものから順に試着して、靴見てカバン見て、お茶して本買って、戦利品が腕にずっしり食い込んできたところで日が暮れる。大抵が渋谷、たまに新宿、ときどきその他のターミナル駅を回遊し、自動車を所有する気などなかったが、両手で持てないほど重いものを買う機会もそうなかった。デスクトップパソコンを新調した日さえ、自慢げに提げて持ち帰ったのだ。今となってはおそろしく古い感覚で、懐かしい。

 今はポチる。何でもポチる。クルマに載らない家具でさえ玄関先に届く。それが当たり前で、とくに便利とも思わない。素敵な音楽を聴けばその場で検索してポチる、面白そうな書題を聞けばその場で検索してポチる、水や酒のケース買いどころか、今ここで立ち読みしている雑誌さえ「持ち帰るのが億劫」とレジへ運ばず手元でポチる、果てはドラッグストアの前を通りかかって「あ、トイレットペーパーきれてた、洗剤も買わなきゃ」と目にした商品をiPhoneでポチる、……いつからそんなふうになったんでしょうね? なかなか思い出せない。私は忘れてしまっている。

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ハジの多い人生

岡田育

趣味に対する熱量の高いツイートと時事に対する冷静な視点でのツイートを自在に繰り出すWEB系文化系女子okadaicこと岡田育。 普通に生きているつもりなのに「普通じゃない」と言われ、食うに困らず生きているのに「不幸な女(ひと)」と言わ...もっと読む

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コメント

umaretatee 熱いEstyへの愛を感じました。 約5年前 replyretweetfavorite

fumix ハジッコ女子! 約5年前 replyretweetfavorite

sanukimichiru http://t.co/Px4nT2Mvs1 だが。  しかし紹介元記事のやつは課金してないと途中までしか読めないのかな・・?   「インターネット買い出し紀行」 https://t.co/cY0FHzJMQf 約5年前 replyretweetfavorite

yanabo 内容にまったく関係ないのだけれど漫画『ヨコハマ買い出し紀行』私のオールタイムベスト10に入る素敵な漫画。というわけで今回もイク節がまわるまわる 約5年前 replyretweetfavorite