ぼくは昔、潜水艦が大好きでした。
小学校6年生のとき、 卒業文集の“ぼくの夢、わたしの夢”というお題の作文には、「自分で作った潜水艦で、世界の海を旅したい」と書きました。
その頃テレビをつけると『海底少年マリン』とか『海のトリトン』とか、海をテーマにしたアニメがよく放送されていたからです。ぼくは海に憧れて、水泳が大好きになりました。
でもなぜかいくら泳いでも息継ぎができるようにならなかったので、高校を卒業するまで息継ぎをするふりをしていました。
そして息継ぎができないぼくが海底を旅するには、潜水艦が必要だと思っていたのです。
ところが「潜水艦を作りたいです」と作文に書いたら、すぐに職員室に呼び出されました。
先生は怒っていました。そして「他の子はみんな“ちゃんとした仕事”のことを書いているのに、おまえだけどうしてこんな“できもしない夢みたいなこと”を書くんだ」といいました。
「夢を書きなさい」といわれたから、すなおに夢を書いたのに、「夢みたいなことを書くんじゃない」といわれました。
ぼくはこまってしまいました。
先生によれば「潜水艦なんて作れるわけない」ということなんです。なぜかとたずねれば 「すごくお金がかかるし、 よっぽど頭が良くないと無理だから」 なんだそうです。
ゼロから潜水艦を作ることなんてできるのだろうか?
2021年7月3日
ーー忘れかけていた夢がとめどなくあふれてくるーー北海道の小さな町工場から、幼いころからの夢だった「自分のロケット」の開発へ。誰もが「どうせ無理」だとあきらめていたことを、「工夫」によって次々と実現させていく著者の姿勢と、素朴で力強い言葉に心を揺さぶられます。『好奇心を“天職”に変える空想教室』より全文公開(毎週土曜日更新予定)。