ワインはとにかく「品種」が命です。
いちごの“女峰”や“とちおとめ”のように、また、りんごの“ふじ”や“紅玉”のように、ワインで使われるぶどうにも品種というものが存在していて、ワインの味は、ほとんどこの“品種”によって決定します。
もちろん、そのぶどうの産地によっても、どこの醸造所で造られたかによっても、醸造家は誰か、造られた年代はいつか、どれだけ丁寧にぶどうをより分けたか、などの様々な条件によっても味は変わってくるものですが、厳密な「おいしい」「まずい」という判断を後回しにするなら、基本的な味のベクトルはこの〝品種〞が決定しています。
だからワインを知る近道はまず、品種の味の特徴を「ぼんやりつかむ」こと。
そんなに難しいことではありません。
品種の数は、世界に数千種類あるともいわれますが、そのトップグループに位置する主要品種というのは、次の六品種しかないからです。
まずは赤のカベルネ・ソーヴィニヨン。
いきなりキター! まぎれもなく世界中で愛されるワインぶどう界の主人公的存在です。ボルドーにおいては超高級な神ワインにも化けるパワフルボディの優等生でもあります。
つづいてピノ・ノワール。
ブルゴーニュにおける最重要品種です。土地の選り好みが激しい孤高のクイーン。偉大な【ロマネコンティ】をも生み出す高貴で複雑な味わいは、ボクたちワイン〝痛〞たちの心を撃ち抜きすぎです!
そしてメルロー。
カベルネ・ソーヴィニヨンと双璧をなすボルドーの重要キャラです。果実味があるのに、タンニン少なめ。まろやかで丸みのあるふくよかさはまさに美しき女性。そして女性なのに「腐葉土の香り」がするなんて反則......。
お次は白のシャルドネ。
はい、もちろん大好きです。世界中で愛されるスーパーアイドルです。シャブリ、シャンパン、カリフォルニアの白と変幻自在、その土地その土地の風土に見事に染まる真っ白なキャンバス。俺色にも染まって!
さらにリースリング。
ああ愛しのリースリング......。貴腐、アイスワインなど数々の「高級甘口」の金字塔を打ち立てた甘口白の筆頭品種です。もともと酸っぱいからこそ、甘すぎない、おいしい甘口になっちゃうなんてツンデレにもほどがあります。
最後はソーヴィニヨン・ブラン。
ハアアアアン! 青草やハーブの香りで口の中を容赦なく「爽やか」に仕上げる、すっきり白の代表選手です。青い! 青すぎる! ああ、いっそこのまま君と一緒に長ネギになってしまいたい。
......ハアハア、失礼いたしました。ちょっと取り乱してしまいました。人気キャラすぎるこの六品種が一堂に会することを想像しただけで、興奮が抑えられませんでした。
この六つの品種の味を覚えてしまえば、わりとすぐに好みのワインにたどりつけるようになります。
たとえば、こんなふうにしてみてください。
赤ワインの場合はまず、カベルネ・ソーヴィニヨンという品種が使われたワインの味を、飲んでみて舌に記憶させます。カベルネ・ソーヴィニヨンという品種は、赤ワインの味の直球ど真ん中だからです。
多くの人は「ベタな赤ワインの味」というものをぱっと思い浮かべるとき、きっとカベルネ・ソーヴィニヨンの味を想像していることでしょう。
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