東田直樹
見えないものに、身をまかせること
重度の自閉症を抱えながらも、社会を鋭く見つめている作家・東田直樹さんの連載です。 今回は、人の「思考」に関する東田さんの考察です。 「何かに煮詰まると、一度そこから離れてみる」という経験が、私たちにもあるのではないでしょうか。 東田さんはそのときの感覚を、風に身を寄せる植物にたとえています。 ゆっくりと繰り返し読むことで、少しだけですが東田さんの感覚に近づけるような気がする、そんな今回のエッセイです。
僕は、植物にしっとすることがあります。
「人は考える葦」と言ったパスカルも同じ気持ちだったのではないでしょうか。
葦は、確かに人間から見れば弱い植物かもしれませんが、植物自体に強い弱いという概念はありません。与えられた土地で自分の一生を懸命に生きるだけです。嵐の日もそよ風の日も、そこに居続けることが使命なのです。
僕が原稿を執筆する際、書く内容に煮詰まると、少し時間をおくことにしています。
その間に考えをまとめているわけではないのです。頭の中を一度からっぽにしたいためです。
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この連載について
東田直樹
「僕は、まるで壊れたロボットの中にいて、操縦に困っている人のようなのです。」
会話ができないもどかしさや意に沿わない行動をする身体を抱え、だからこそ、一語一語を大切につづってきた重度自閉症の作家・東田直樹。 小学生の頃から絵本...もっと読む