山内宏泰
「
ターナー展」——英国絵画の巨匠が描く「見たまま」の風景
英国文学の顔といえばシェイクスピア。では英国絵画の顔といえば? 今回ご紹介するのは、19世紀前半にイギリスで活躍した風景画家・ターナーです。上野の東京都美術館で行なわれる展示には、なんと100点以上の作品がお目見えしています。風景画といっても、写実的ではなく「え、これは何を書いているの」と首をかしげてしまいそうな絵がイギリス国民に愛されている理由とは。「見ること」の意味について今一度考えたくなる展示です。
今回は東京上野で開かれている「ターナー展」を覗いてみたく思います。会場は改装されたばかりの東京都美術館。ピカピカの展示室に、どちらかといえば渋めの作風を持つターナーの絵画が、よく映えていますよ。
油彩が約30点、素描などは100点を超えるという、なかなかのボリュームでの展示となりました。ターナー作品がこれだけまとめて日本にやって来るのはごく稀なこと。貴重な機会となりました。
ターナーは19世紀前半に活躍した画家です。母国の英国では、存命中から現在にいたるまで、国民画家としての地位を揺るぎないものにしています。英国文学の顔といえば、大半の人がシェイクスピアの名を思い浮かべることでしょう。同じように英国絵画の世界においては、ターナーこそがその代表格なのです。
そういった国民的画家が、日本にははたしているでしょうか……。日本文学の顔といえば、夏目漱石らの名が挙がるかもしれませんが、美術となると難しいですね。国民的存在をなかなか持ち得ないのは、日本の近現代美術の残念なところです。
ターナーは、風景画の巨匠として知られる存在です。大胆で確かな画面の構成力をベースに、類い稀な色彩感覚を発揮して多くの人々を唸らせる作品をものしました。
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この連載について
山内宏泰
世に“アート・コンシェルジュ”を名乗る人物がいることを、ご存じでしょうか。アートのことはよく知らないけれどアートをもっと楽しんでみたい、という人のために、わかりやすい解説でアートの世界へ誘ってくれる、アート鑑賞のプロフェッショナルです...もっと読む
著者プロフィール
ライター。美術、写真、文芸その他について執筆。著書に『写真のフクシュウ 荒木経惟の言葉』(パイインターナショナル)『写真のフクシュウ 森山大道の言葉』(パイインターナショナル)『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)『写真のプロフェッショナル』(パイ インターナショナル)『G12 トーキョートップギャラリー』(東京地図出版)『彼女たち』(ぺりかん社)など。東京・代官山で毎月第一金曜日、写真について語るイベント「写真を読む夜」を開催中。東京・原宿のスペースvacantを中心に、日本写真を捉え直す「provoke project」開催中。
公式サイト:http://yamauchihiroyasu.jp/