アル中の共通点は「モノを食べられない」
「若い頃より飲めるようになった」「記憶をなくす」
中川 オレは小田嶋さんがアル中末期にとらわれたような気分にはなったことないんです。それでもやっぱりアル中の危険性ってあるように見えますか?
小田嶋 そうですねー。中川さんはアル中の人が陥る項目に結構当てはまっているから、かなりの確率でまずいんじゃないかと思いますよ。ただね、人によって症状の現れ方って違うみたいですよ。
中川 え! たとえばどんなものですかね。
小田嶋 たとえば、禁酒して最初の2、3日ぐらい眠れないみたいなのはなかった?
中川 ちゃんと眠れています。幻聴とか手の震えぐらいはあるかなと思ってたんですけど、意外となにもないですね。
小田嶋 眠れているっていうことは、いいことだね。僕の場合、いまみたいに完全に禁酒する前にもお酒を抜いたことはあるんですよ。でも、それでもずっと眠れなくて。そして、心療内科に駆け込んだときには5日間ほぼ全く眠れてなかったんですよね。
中川 5日間も!
小田嶋 そうそう。で、幻聴やらが出てきたんです。いま思えばそれは眠れないことの副作用だと思うんですけど、当時は「コレは頭が狂った」と焦ったんですよ。だって、そのときは自分がアル中だと思っていないから。あとの兆候としては、さっき話をしてた「あまりモノを食べられない」とか。
中川 それは当てはまってます。オレ、つまみが焼き鳥1本とかでも、ビール3本ぐらいは飲めるんです。ちなみに、小田嶋さんが飲んでいたときはつまみに何か食べてましたか?
小田嶋 いやいや、僕も飲むときは全然食べないんですよ。だから、アル中になっていたときは、体重がいまより20kgぐらい少なかった。そもそも飲んでない時に食べ物を見ても、あまり食べたいとは思わなくなってたんです。
中川 一緒です。僕は、どうせ食べても吐いてしまうから食べたくなかったんですよね。
小田嶋 そうそう。僕もよく当時住んでいた笹塚の駅前の立ち食いそば屋に行って、蕎麦を食べていたんです。でも、気持ち悪くて全部は食べられない。だから、2、3口食べると、全部残してしまうんです。お金がもったいないとは思いつつ、蕎麦ぐらいしか喉を通るものがないから注文する。それをしばらく続けていたら、蕎麦屋のオヤジから「食べないなら帰ってもらうよ」と言われてしまって。
中川 店の人からしたら、よく来るのに食べないから、イヤな客だと思ったのかもしれないですね。
小田嶋 でも、本当に食べられないんですよ。お店の人に悪いなとは思うんですけど。逆に蕎麦を一口でも食べられれば、まだ体調がいいほうなんですけどね。
中川 オレは今年で40歳になるわけなんですが、同級生とかと話をすると「昔ほど飲めなくなってきた」って言う人が本当に多いんです。でも、オレの場合は、学生時代はそこまで飲んでいなくて、逆にフリーになってからお酒を飲む量が増えていったんですね。
小田嶋 あぁ、それも兆候のひとつですね。「若い頃よりも飲めるようになった」っていうのは、悪いサインなんです。僕もそうで、若い頃よりも飲めるようになってしまった。肝機能が下がっているせいか、飲んでもカーっと急に回らなくなったからガバガバ飲んでしまうという。
中川 しかも、飲み過ぎてしまって記憶が飛んじゃうんです。本当になにも覚えていない。いつも翌日の午前中に、一緒に飲んだ人たちに「オレ、ちゃんとお金払いましたか?」とか「なんかやらかしてないですよね?」って確認するんです。逆にお金を払い過ぎちゃって、3万円ぐらい財布に入っていたはずなのに、1枚も1万円札が残っていない……なんてときもありました。
小田嶋 ああ、わかる! 「2軒目の店までは覚えていて、その後の記憶がないんだけど、大丈夫だった?」って、僕も飲んだ翌日一緒にいた人たちに電話して確認しましたよ。多分、「酒を飲んだときに記憶をすぐになくす」っていうのも、危険度合いが高いのかもしれない。