牛込の加寿子荘

牛込の加寿子荘」 第五回

築40年を超える「加寿子荘」での生活風景。能町みね子の自叙伝風小説! (『少年タケシ』2011年1月更新分より)

ここのところの私の生活は、午前四時寝の十一時起きでほぼ固まってきました。週一のアルバイトが変な時間なのも利いている。こんなところで固まりたくないのに……。
でも、ひとつだけいいところは、寝る前の早朝にゴミを捨てることで、捨て忘れがなくなるということです。
などと思いながら、ある日も午前四時ころ寝間着で外にゴミを捨てにいったのですが、部屋を出て廊下の電気のスイッチをつけるとちょうど同時に、スイッチのすぐそばにあるタエコさんの部屋の戸があいて、パジャマ姿のタエコさんと鉢合わせした。
タエコさん!パジャマ!水色の!
タエコさんは土穴に住む動物のようにすぐにドアを閉め、わたしはしばらく何が起こったのか分からず、茫然としてしまいました。
我にかえってゴミを捨てて部屋に戻ってきたけど、その間にタエコさんちの戸が開いた様子はなかった。トイレは各部屋にあるのだし、なにかしらの用があって戸を開けたなら階段を降りて外に出ないことには何もできないはずなのだ。タエコさんはパジャマで、あの扉を午前四時になんのために開けたのだろうか。
ふしぎでふしぎで。ふしぎの着地点がないまま、寝る。

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