タクハタノヒメミコ
雄略三年四月、阿閉臣(あへのおみ)※1クニミ(国見)は、タクハタノヒメミコ(栲幡皇女)と湯人(ゆえ)※2の廬城部連(いおきべのむらじ)※3タケヒコ(武彦)を陥れようと、嘘の報告をして、
「タケヒコが、皇女をけがして身ごもらせました」
と言いました。タケヒコの父キコユ(枳莒喩)は、この流言を聞いて、我が身に禍いが及ぶことを恐れました。
タケヒコを廬城河(いおきのかわ)※4に誘い出し、だまして、河で鵜飼(うかい)※5をする真似をして、不意に打ち殺しました。
雄略天皇はこれを聞き、使者を遣わして、皇女を取り調べました。皇女は、
「身に覚えはありません」
と答えると、突然、神鏡(みかがみ)を取って、五十鈴川(いすずがわ)の川上に持っていき、人のいないときをうかがって鏡を埋めて、自ら首をくくって死にました。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。