Q.吟味して結婚したのに、元カレの幻に苦しんでいるのですが…

かなり吟味して結婚したはずなのに、未だに学生時代につきあっていた元カレのことを引きずっているという相談者さん。家に閉じこもる日々の中でイライラが募るばかりだそうで……
元メンヘラで現ハッピーリア充のスイスイさんが、相談者さんの本当の悩みを考えます。 また、本連載を大幅加筆した初書籍『すべての女子はメンヘラである』が好評発売中です。併せてお楽しみください。

秦基博になりたかったボーイとYUKIになりそこねたガール

私は新婚ですが、結婚すべきではなかったのではないかと悩んできたので投書しました。

学生時代につきあっていた元カレの幻が私を苦しめます。
スイスイさんは元カレへの想いと旦那さんとの結婚に矛盾を感じたことはないですか? そこは葛藤なく両立させられていますか?

元カレは大学生のころ軽音楽部で出会い、ひと目見たときから気になってつきあいました。ひとつ年上で、彼が就職してからは遠恋になったので一緒にいれた時間はかなり短かったのですが、バンドを組んだり部活仲間と一緒に遊んだり、とにかく思い出がキラキラしていて、感傷に浸ってしまいます。

遠恋期間中にすれちがい別れましたが、彼はサラリーマンをやめシンガーソングライターを目指し、その夢を追う中で出会った女の子と結婚しました。

結婚のことを知ったとき動揺して連絡を取りましたがそこで拒絶を示され、挙げ句の果てに奥さんになる人に「元彼に夜な夜な連絡する女はブス」とツイートされました。
そんな人を大事にしていることにムカついて、彼のスタンスに関する的確な批判ツイート(ぬるま湯の環境にいるとか、歌が上手くならないこととか言ったと思います)を行い、決裂。互いにSNSをブロックして「きれいな思い出にもできなかった…」と泣きました。
そして、私も彼も心のどこかでSNSに相手がいることを意識していたんだ、となんとも言えない気持ちになりました。

定職につかず、売れない歌うたいの彼を私はきっと見下していました。なのに結婚して上京し、そこそこ楽しそうにしているのが私は気に入らないのです。

私も編集やライターとして東京で働きたかった。ライターとしての夢は地元にいても半分叶いました。Yahooに引用されるレポートも書きました。
でもライターだけで食べるにはまだまだで、会社員をしてます。

しっかり食べれるだけの稼ぎがない=結婚すべきでない、という思い込みを、彼は(ちょっと私に似ているが、私より可愛くない)女の子と軽々超えたのが悔しいんです。

夫とは本業の取引先で出会いました。生理的にタイプなのですが、音楽の趣味やノリはいまいち噛み合わないな~と思います。
私は結婚願望は強くなかったですが、おいおい子供は産んでみたいこと、結婚もしてみたいこと、私のやりたいことに理解があること、近くにいるとなんかよく寝れること、一緒に食べるごはんがおいしいことなど、かなり吟味して結婚しました。

家族の次に信頼できる人にはじめて会いました。
ただコロナで結婚式も延期になり、副業としてのライター業もなく、ずっと家に閉じ籠っているとイライラしてしまうこともあり、元彼といた日々が思い出され、結婚願望が薄いからこそ、「本当に好きな人と結婚する」が私の夢だったのでは…?!と頭を抱えてしまいます。

夫と会ったとき、スイスイさんが旦那さんと出会ったときのような天啓はありませんでした。
結婚式を例えば妄想するとしても、夫とはきちんと友達を呼んでしっかり挙げたいですが、元彼とだったら家族婚だけでもいいな、とか考えてしまい…これは完全に夫を「映え」要員にしていないか?!と愕然としています。

おそらくこのままでは変わらないので、
・いやいや続けている会社を辞める
・東京留学する術を本気で考える
などを検討しています。

たぶん暇かつ、今の自分が好きじゃないからこんなことを考えてしまってると思うからです。
こんな私にアドバイスを頂けないでしょうか?

このままだと元彼との思い出デートツアーをやりかねませんし、元彼のTLを監視してたまに投下される歌を「やっぱり下手、、、」となじりながらも、その歌のヒロインは永遠に私であれ、と願う自分に引き裂かれる日々です。

最後に、私と元カレはスイスイさんの後輩にあたります。
お話したことはなく、エゴラッピンをかっこよく歌うとても美人な先輩、の印象でした。

スイスイさんとラスボスさんは壮大な愛の物語になるというのに、どっちも半端者な私と元カレはとても陳腐なエンドです。
秦基博になりたかったボーイとYUKIになりそこねたガールという感じです。

(つぐみ・32歳・女・会社員・ややメンヘラ)

この相談文すごく不思議なんだけど……
読めば読むほどただの恋愛相談じゃないのだ。

前半は、
・新婚だが、結婚すべきではなかったのではないか?
・(元彼を引きずりながら結婚することを)、葛藤なく両立させられるか?
・「本当に好きな人と結婚する」が夢だったのではないか?
と、いわゆる王道の元彼引きずり系恋愛相談なのに、解決策が「元彼をブロックする」とか「夫と距離を置く」とかではない。

後半に突然出してくるのは、
・いやいや続けている会社を辞める
・東京留学する術を本気で考える
になるのだ。

なんというか……
「どの相手を選んだら幸せになれますか?」じゃなくて、「どの相手を選んだら私は自分の人生を好きになれますか?」
と聞かれてるような。

でも本来、結婚相手とあなたの人生への肯定感って、そこまで直結しないもの。
いや「この人と歩む人生なら好きになれる」と思えるような相手を選ぶのも手ではあるけど、相手ありきの肯定感に頼っても今回のモヤモヤの根本解決にならない気がする。

この元彼に拒否されたままでも、今の夫と離婚してもしなくても、あなたは必ずあなたのことを好きになれるし、自分を「特別」だと思える。

あなたの悩みの核を探り当てつつ回答したい。ついてきてね。

染まらない彼が好きだった

いきなりだけど、たぶんAくんは特別な部分を持っていた。
その特別さがあなたを引き止め続けている気がする。

まず私が所属していた軽音楽部というのは、名古屋最大級のマンモス軽音であり常に部員が100人近くいる。
あなたとAくんが私と同じ時期に所属していたといっても、普通は誰だか分からない……はずなのですが、私のストーキング力とリサーチ力(+あなたから得た年齢情報)とでAくんのアカウントと近影は特定できた(たぶん)。

その上で私が思ったのが「Aくん、知らない人だな?」だった。
このことから、彼の最大の特性「群れない/染まらない」が伺い知れる。

どういうことかというと、私はAくんが1年生のとき副部長をしていた頃なので、さすがにその頃活動していた後輩は全員把握しているし、かつAくんの年代は特に人数が少ないから全員わかる。
(ちなみに3つ下のあなたは接点なさすぎてわからない)

なのに私が顔も知らないということは、Aくんが一年目あまり部活に参加しないタイプだったか、途中入部してきたか。

それってあの人間関係狭小な軽音では相当めずらしい存在なのだ。

入部直後から「人間関係で遅れを取りたくない」と必死な人が多く、個性的なフリして「群れたい/染まりたい」という欲まみれなあの世界において、Aくんは途中から参加できてしまうかなり自我があるタイプ。
(学年で1人いるかいないか)

さらにAくんの活動を見ると、きっとオリジナル曲も作り部外での活動もしてきた口ですよね。あのコピーバンド主流のミーハー軽音ではそれも特別。

そんな環境もあり、あなたにとって彼は「群れない/染まらない」側の人として特に際立ったのでは。
だから一層気になり続けてしまう。

だって「群れない/染まらない」こそ、あなたのコンプレックスの核だから。

優等生コンプレックス

あなたのコンプレックスというのは、「常識に従ってしまう」「世間のルールを気にしてしまう」「正しいレールから外に出られない」というような優等生コンプレックスだよね。

そしてそのコンプレックスの真逆、「常識もルールも気にせず、レールから外れるのを恐れない人」がAくんだった。
そんな彼に好かれてる間、あなたは自分のことも「特別なのかも」と感じられて、コンプレックスが薄まる気がしたのでは。彼に好かれてるときは、自分を好きでいられた。

なのにその称号を、奥さんに取られてしまったことで自分の価値が空っぽに思えてしまった。
だから自尊心が暴落し、人生まるごと焦り出しているのでは。

つまりあなたにとってAくんは、恋愛相手というより自尊心補充相手(兼、コンプレックスを刺激してくる相手)だった。

もしAくんのことをシンプルに恋愛相手としてだけ見てるなら〈私より可愛くない〉上にSNSで暴言吐いてくる奥さんと結婚した彼の株って下がると思う。
逆に再熱したのはなぜかというと「私より可愛くもないし性格キツそうな相手とでも結婚してしまう、やっぱ優等生じゃない彼!」に嫉妬してるからだと思うのだ。

さらに言えば、常識やルールに従い努力してきたあなたにとって、自由すぎるAくんはズルく見えてしまい、成功するのが許せない。だからTLも嫌な目で監視してしまうのでは。

つまり私と私の元彼であるラスボスさんとの話とは構造が違いすぎる。

そして、私とあなたの最大の違いが以下の〈引き裂かれる〉という部分。
〈このままだと元彼との思い出デートツアーをやりかねませんし、元彼のTLを監視してたまに投下される歌を「やっぱり下手、、、」となじりながらも、その歌のヒロインは永遠に私であれ、と願う自分に引き裂かれる日々です〉

私の場合、ラスボスさんとの思い出ツアーもするしTL監視生活するし、最愛元カノは私であれと願いまくってるけど、そんな自分に引き裂かれたりなんてしない。
なぜなら私は彼をひきずりつつも、自分単体の人生を大充実させて謳歌しているから。

つまりつまりつまりたぶん、あなたが楽になるために最も大事なことをまとめると……
あなたが「自分単体でも充分特別で最高」と思えるようになることかと。

誰と結婚しても離婚しても一生元彼を引きずってても、元彼の奥さんにブスとツイートされようとも構わん! 自分最高!と思えることをゴールとすれば、だいぶ楽になれるはず。

優等生コンプレックスを解消して前に進まないと、自分を好きになれない。
自分を好きになれないと、A君に好かれることでしか自分に自信を持てない。
A君に好かれることでしか自分に自信を持てないと、結婚生活さえも常に失敗と思ってしまう。

長くなりましたが敵を定めよう。
あなたが戦うべきは、優等生コンプレックスのみだよ。

コンプレックスとの戦い方

今回コンプレックスとの戦闘法は2つ。

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“メンヘラ”とは、もともと「心の病を患った人」を指すネットスラングです。でも今ではすっかりカジュアルに偏在しつつある“メンヘラ”。その樹海から脱け出したスイスイさんが、我が身を振り返りながら、今さら聞けないメンヘラの基礎の基礎、そして...もっと読む

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granat_san この相談でこの回答を出してくれる信頼性がすごい。 約1年前 replyretweetfavorite

seki_saba_ |スイスイ @suisuiayaka |メンヘラ・ハッピー・ホーム 神回量産場 https://t.co/Nlg3LOvi6f 約1年前 replyretweetfavorite

kazumixilog いい担当教授に出会えて良かったね。相談者さん、卒業!!!(笑) https://t.co/m0yIg0L3hX 約1年前 replyretweetfavorite

leafmoongreen12 スイスイさんの文章、じんわり染みてきてあったかくて好きです。 約1年前 replyretweetfavorite