さていよいよ手術当日となりました。
前日夜から絶食中の息子を目の前にして私も何だか朝ごはんを食べる気になれません(こっそりちょっと食べた気もする)。
早くその時がくれば良いのにと思う気持ちと先延ばしにしたい気持ちが無いまぜになり、何だかよくわからない表情になっている私。
息子は何をしていたかな・・・持ち込んだiPadでYouTubeでも見ていたような気がしますが覚えていません。
私はすることがなくて結局持ってきたコテで髪を巻いたりしていたような・・・(髪を巻く必要は全然ないのですが、なんかしてないと落ち着かない・・・持ってきてよかった)。
何もしていなくても、時間というものは刻々と過ぎていきます。
とうとう時間になり、ストレッチャーに移動した息子に寄り添い、手術室へ・・・。
真面目でおとなしい息子は嫌がることもなく、終始無言ではありましたが、その表情は完全に不安一色。
それはそうですよね・・・若干8歳の子供が恐怖の「全身麻酔のリスクについて」のビデオを見せられ、お腹も空いているし、今から何が起こるか(何をされるか)よくわからず、ストレッチャーで運ばれているのですから。
ドラマ嫌いの息子(父親が出演しているドラマも観ない・・・パパかわいそう)は手術室のイメージもつかなかったでしょう。
一方ドラマ見過ぎの私は中で何が行われるかを過剰に想像してしまい、誰かが何かをミスって息子の命が危険にさらされ、「失敗しない女医」が颯爽と現れるとこまで思い描いてしまっては、違う違う!と首を降ります。
両開きのドアが開いて、吸い込まれるようにストレッチャーが入っていきます。
全身麻酔なわけですから「がんばってね!」もおかしいし、と思った私は、
「じゃあまたあとでね!」とか言って送り出したような気がしますがよく思い出せません。
ただ、「これが最後かも。」という考えがチラッと横切ったのははっきりと記憶しています。
「鼻骨骨折」の手術で万が一の不幸が起こるなんてことは10万分の1だと分かっていてもその10万人に1人に自分の息子がなる可能性が0ではないと考えてしまうのが母親というものではないでしょうか・・・。
深々と手術室にお辞儀をしていたら、看護婦さんに
「お母さん、また呼びに行きますので、病室でお待ちくださいねー。」
と前日までと同じ軽いトーンで促され、「あ、はい!」と我に帰り、(あれ?どうやって帰るんだっけ?)といきなりいつもの方向音痴ぶりを発揮し、今この病院に初めて来た人みたいに、いろんな人に聞きながら、小児病棟へ戻って行きました。
そこから数時間(3時間くらいだったかな)ただ待つだけという地獄タイム・・・。
髪も巻いたしメイクもしたし、何かを食べてもなんか味しないし(コロナの心配はまだなかった)、することがなく・・・小児病等の病室から外を眺め、たそがれるしかない母・・・。
目の前が高校で、3階の病室から、学生たちが体育の授業を行なっているのがよく見えます。
(わー、共学かー、いいなぁ、青春やなぁ、うちの子もいつかあんな風になれるんやろか・・・)と、多分なれるのにその時はなれない確率80%くらいの気がして、涙ぐんだり・・・情緒が安定しないアラフォーママ・・・。
いよいよお迎えの時が来て(言い方おかしい)、看護婦さんと一緒に病室を出ます。
「しゅ・・・手術は成功したんでしょうか?」(大袈裟な聞き方をする私)
「ん?ああ、はいはい。大丈夫ですよー。」(相変わらず日常のひとコマである看護婦さん)
などと会話をしながら手術室へ。
両開きの扉が開いて息子の乗ったストレッチャーが2人くらいの看護婦さんに寄り添われて出てきました。
腕には点滴・・・鼻はギブスでしょうか、白いものをかぶせられています。
麻酔後一度起こすらしく、(意識があるか確認のため)息子は起きているけど意識朦朧という感じ・・・。
私はその見た目が入室時より「怪我人」になっていることに驚愕しましたが、一瞬で気を取り戻して、
「〇〇(息子の名前)!よくがんばったね。」と声をかけます。
そのまま看護婦さん達と一緒にストレッチャーの横について、病室まで・・・。
その間息子は何度も起き上がろうとしたり、いやいやと体を揺すったりします。