おおらかでさっぱりした人は、「気持ちがいい人」と言われます。逆に、細かくて心配性の人は「器が小さい」と見なされがちです。 心配性の人は、いちいち気になってしまうんです。 たとえば営業マンであれば、顧客を訪問した後、心配のドラマが始まります。
「今のお客様への説明は、わかりにくかったかも……」 「気づかないうちに、失礼なことを言って嫌われたかも……」 頭の中でぐるぐるとイメージが巡(めぐ)ってしまい、休みの日でも仕事のことが気になります。不眠症になる人もいます。 家族や友人に相談すると、返事はたいてい「気にしすぎ」です。本なんかにも、「考えすぎる人は、考えない時間を持ちなさい」なんて書いてありますよね。
何年もかけて染み付いた考えすぎる性格は、なかなか変えられません。心配したくてしているのではなく、無意識のうちに心配してしまうためです。心配性の人に「心配するな」と言うのは「息をするな」と言うのに等しいのではないでしょうか。
私なら、大声ではっきり、こう申し上げます。 「思う存分、心配しなさい!」と。
禅に「行持綿密(ぎょうじめんみつ)」という教えがあります。修行道場に行きますと、それは細かい、いろいろな作法がびっくりするくらい細かく定められています。私は大雑把な人間ですから、若い頃はこの行持綿密に反発していました。 「そんなの、どっちでもいいでしょう。いちいち気にしなくてもいいじゃないか!」 しかし、どんなこともすべて型どおり綿密に執り行うことも、禅の修行なのです。
そのように細やかな心配りができる性質、心配性は悪いものではありません。弱みではなくて強みです。思慮深いという貴重な武器です。 大切なのは、その心配をどこに向けるか。自分が悪口を言われるかも、嫌われるかも、信頼されないかも、評判を落とすかも……。
このように、自分のことを心配しているのは、単なるくよくよ病です。 すでにやってしまった過去について心配してもどうにもなりません。人がどう思うかを心配したところで、他人の気持ちをコントロールすることはできません。
でも、その心配性が仕事やお客様に向けられるなら、それは間違いなく長所です。 一流と言われる経営者や芸能人は、みんな心配性です。細かいところまでよく気がつきますし、心配ばかりしています。いや、細かいことまで気がつくから一流のサービスや一流の芸ができるし、責任ある仕事が務まるのだと思います。
心配性を長所に変えたいのなら、目標達成のための行動で、自分の強みである細やかさと思慮深さをフル活用してください。 行動を終えたら、ただ「失敗したかも……」とくよくよと考えるのではなく、「どこが悪かった。それをこう直そう」という具体的な反省に置き換えてください。
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