自分を快適でいきいきとさせるために、ジャマなものを見つけて取り除きたい。

長い時間をかけて積み上がったものは、同じくらいの時間をかけてほどいていくのがいいのかもしれません。今回の文章の中に出てきた「ひとつひとつバームクーヘンの層をはがすように」という言葉は、本当にその通りだなって思います。そういえば、バームクーヘンを作るときもグルグルと時間をかけて作りますしね。連載第34回は、「きれいなる」についてのアンサー。寒さには勝てないサクちゃん。まあ、負けるが勝ちって言葉もありますから、あったかくして過ごしましょう。(毎週火曜日更新)

蘭ちゃんへ

こんにちは!

最近は、いつのまにか「寒い」と感じることが多くなりました。我が家はマンションの1階だからか、冬は部屋の中がやたらと寒いのです。なんとなく負けた気がしつつ、暖房器具をだしてきて着けました。さらには電気毛布まで用意しました。ブランケットがぬくぬくと温かくなるのですが、一人分のコタツのようで最高です(今も膝の上にいます)。

蘭ちゃんとプリンを食べたのも寒い日でした(今見たら12月の初旬でした)。また食べながらおしゃべりしたいねえ。

*ー*ー*

前回は「きれいになる」ってどういうことだろう?というお話でした。

たしかに、高校生の頃、わたしの周りにも「きれいな人=痩せている」「痩せているほどきれい」という考え方の傾向がありました。それで、「痩せる石鹸」とかが出回っていました。まさに、課題に群がる雑な解決法だよね。

そういう中で、当時のわたしはどう感じていたかなあと思い出してみたのですが、蘭ちゃんのように(後からその選択肢の狭さに嘆くとしても)「きれいになりたい」と素直に願うことができませんでした。さらにもう一周こじらせていて、「自分なんかがきれいになろうとしてもムダだ」と思っていました。く、暗い……。

どうしてそうなってしまったのか、今ならわかります。

わたしは三姉妹の中間子なのですが、子どもの頃、父親がわたしたちを呼ぶとき、姉のことは名前で呼び、妹のことは「チビ」と呼び、わたしのことは「デブ」と呼んでいました。今になると本当にひどい呼び方だと思いますが、家の中ではその呼び名が当然で、誰も疑問に思っていませんでした(ちなみに特に太っていませんでした)。

小学校の低学年の頃だったか、夏休みに父方の実家に遊びに行った際、いつものように「おい、デブ」とわたしを呼ぶ父に、祖母が「そんな呼び方、やめてあげて」と泣きながらお願いしていました。父は「ただのあだ名だよ」と答え、わたしも祖母がなぜ泣いているのかわかりませんでした。

そんな呼び名とどちらが先か覚えていませんが、母もまた、姉妹の中でわたしにだけ「あなたはくせ毛でどんな髪型も似合わないから、短く刈っておきなさい」「あなたは何を着せても似合わないから服を買いたくない」と、よく言っていました。

あまりによく言われていたので覚えてはいますが、当時は、いやだとか悲しいという気持ちはなく、ただ「そうなんだな」と思うだけでした。親の言うことはすべて正しいと思ってしまうもので、信じてしまっても仕方ないですよね。

と、まあ見本のような「言葉の呪い」にかかっていたので、「きれいになること」と自分との間には大きく距離があり、関係あるとは思えなかったので、「きれいになりたい」と何かを目指して頑張ることがなかったのです。

みんなと同じじゃない個性的な服を着たり、痩せていなくても気にしていないことにしていると、ときに「周りの目を気にせずに堂々として自信がある」と思われることもありましたが、そうではなくて「周りの目を気にする価値がない」と思っていたのです。

そんなネガティブな理由ではありますが、他人の視点や評価を気にしていなかったという点ではたしかにそうでしたし、そのおかげで他人に軸を置くクセはつかなかったので、結果的にはすべてが悪いことではなかったような気もします。

*ー*ー*

そんな話を前置いて、わたしは「きれいになる」とはどういうことだと思っているのか、考えてみました。

体型や顔のパーツなどの見える部分を変化させることや、持っている個性を引き立たせることは、「きれいになる」ためのやり方として無限にあって、どんな選択もまちがいではないと思います。

わかりやすくビフォー/アフターで何がちがうと「きれいになった」のか、わたしは「より快適になった」ときだと感じます。自分がその状態でいた方が快適で、何かを変化させなければ「これは本来の自分ではない」と違和感を感じるのであれば、ダイエットも顔のパーツの整形なども、手段の一つとしてなんの問題もないと思っています。

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サクちゃん蘭ちゃんのそもそも交換日記

土門蘭 /桜林直子

東京でクッキー屋さんをしている「桜林直子(サクちゃん)」と、京都で小説家として文章を書く「土門蘭(蘭ちゃん)」は、生活も仕事も違うふたりの女性。この連載は、そんなふたりの交換日記です。ふたりが気が合うのは、彼女たちに世界の「そもそも」...もっと読む

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コメント

see_na タイトル… https://t.co/NB1tkBEwbi 25日前 replyretweetfavorite

yorusube 今回はサクちゃんの「きれい」論です。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite