人生相談でバズりたい欲望

先日、cakes編集部の認識不足や当事者への配慮の不足によって、たくさんの方々を傷つけてしまいました。このことについて、牧村さんが「今までcakesで読んでくださっていた読者さんにcakesを通して伝えたいこと」を綴ってくださいました。
cakes編集部としては、今後このようなことを起こさないよう、再発防止につとめてまいります(詳しくはこちらをご覧ください)。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや

「うわっcakesじゃん」って思われてるかもしれないな、って思ってます。
もしくは、そもそも「cakesならボイコットだ」って拒絶されているか。

こんにちは。2014年からcakesで連載を続けています、牧村朝子です。

2020年10月19日。編集長名義での謝罪文にあるとおり、cakesでの幡野広志さんの連載において、読者からの相談に「大袈裟もウソも信用を失うから結果として損するよ」と応える記事がそのまま編集を通って掲載されてしまうという事態が起こりました。また公式の広報twitterにおいても、相談を性差別的な表現で「嘘」と断じるツイートが拡散されていました。

本件について、cakes含め、「このSNS時代にインターネットで人生相談を送る/受けること」について、改めて自分の身を振り返らなければ、わたしは、いつか……いや、文字にするだけで胃がムカムカしますけど……「人生相談でバズりたい欲望」に負けてしまうだろうと思いました。

相談とは、「相対して談じる」ということ。人生相談コンテンツに限らず、公開タイムラインやグループチャットを含むSNS時代では、人と人が相対してのやりとりを不特定多数に見せたり、晒したり、目の前の相手ではない何かに意識を取られたままになったりといったことが多々起こります。そういう中で、どうしたら本当に「相談」ができるのか。

直接顔を合わせる関係ではない、直接的な介入の可能性もない、画面越しの第三者にだからこそできる「相談」があると、わたしは思っています。6年間人生相談を書き続けてきたことを踏まえ、「相談」の取り戻し方を考えたいと思います。

まずは本件で相談をお寄せになった方、また、本件で同様の被害やそれを「大袈裟」扱いされた経験がフラッシュバックしてしまった方に、なんと申し上げたらいいか……深く頭を下げております。

●自分は“妻/夫”をやっているつもりだが、相手は“嫁/婿”を求めていた。
●自分は新しく“家族”を始めたつもりだが、相手はいまだ自分の実家の中の“親を超えられない自分”しか見ていない。
●嘘をついてでもイイところ見せたい、みたいなノリのまま、恋愛はギリできるのかもしれんけど、生計・生活・子育ては一緒にはできねえ。

みたいな悲劇が起こっているのに金や思考の余裕がなくて離れられない、みたいなことが、もうこれ以上繰り返されませんように。

「世の中あっちもこっちも地獄絵図だけど、まだ見えてない“そっち”が必ずあるから、絶望させられて地獄絵図に閉じ込められてしまうことなく、なんとかブチ破っていきませんか」とお伝えしたい気持ちですが、「どの立場から言ってんの?」と自分で自分に思います。本当、何も言えずに頭を下げるばかりです。

「まだ見えてない“そっち”」があることを、動けないままでも、スマホ画面越しにでも感じていただけるようなもの作りが、自分の仕事だと思っています。それを2014年からやってきたつもりが、2018年から始まった他人の連載の執筆・編集・広報チェック不足で「cakes全体信用ならない」という評判になってしまう。そして今後はもしかしたら、

「は?あのcakesで書いてるの?」
「えっあなたcakesで人生相談受けてる人?あ〜なんか前炎上してなかったっけ〜?」

くらいのフンワリ感で、わたし含む他の連載者まで勘違いされてしまう。

cakes有料購読者の皆様には、「支持したくない記事は開かなければ作者に課金が届かない仕組みです」ということもtwitterでお伝えしましたが、それでも「牧村さんの読者でしたがcakesには課金したくないので抗議して購読やめます」というご連絡をいただいております。「そうでしたか、そうなりますよね、丁寧なご連絡と毅然とした意思表示をありがとうございます。が…………………………なんで2014年からやっとるわたしが2018年からの別連載のチェック不足で収入減る羽目になってんのん???」という、やり場のないやるせなさでいっぱいです。正味な話。

じゃあcakes降りなよ、って思われるんでしょうけれど。現状、二つの理由であえて降りません。ここからはcakesをことはじめに、物事をどこからどこへ発信するのかってことについて考えていきます。

二つの理由、その一。「オトモダチ言論」を脱したい、ってことです。

「オトモダチ言論」とは、「読者も筆者も制作・運営者も、特定メディアの考え方の方向性にあらかじめ沿うている人物たちばかりが集って、『やっぱりそうですよね〜?私たち正しいですね〜☺️☺️』を確認し合うだけになっている状態」のことです。

例えばわたし、初期は、『LGBTポータルサイト』と銘打った今はなきサイトで連載をしていました。書き手として、「LGBT当事者が書いていますよ」という見せ方になる。そんな記事が、あらかじめSNSプロフィールに「LGBT」と書いていらっしゃる方々に届く。それに意味がないとは言いませんが……その外側では相変わらず、「なんでしたっけ?BCG?BLT?」みたいな世界が展開しているわけでしょ。

言論誌でも、比較的リベラルな『世界』とか『現代思想』からはLGBTにまつわる企画で声をかけていただいたけれど、今のところ『月刊Hanada』とか『諸君!』とかには呼ばれてないです、いや呼ばれたら企画内容を検討の上で行きますけど、行ったら行ったで読みもせず「えっ?牧村朝子、右に行ったの?(笑)」とかって噂する人らが絶対いる。そうやって「あいつらとぼくら」で言論してて、正しさの確認しあい以外に何が生まれるって言うんですか。

自分の書いている媒体に自分の看過しかねる記事が載ったら、出ていくのではなく、ちゃんと残って論じたいんです。また、自分の看過しかねる発言をしている人たちとも、「共演NG〜」とかいって避けずに、「あの人たちは〇〇だから〜」とかいってカテゴライズせずに、またSNS合戦もブロックもせずに対面で、「あなたのあの発言はどういう意図ですか?」ってちゃんと話をしたいんです。6年間cakesで書いてきて、他の著者の記事に「は?」って思ったこと何回もありましたけど、それくらい考え方の幅が広い媒体だからこそ、自分の意見に近い記事しか載ってない媒体に寄稿してオトモダチ言論やり続けるより広く届く可能性も高いと思った。もちろん「考え方の違い」レベルを超えたものについてはきちんと意見します。

それから、二つ目。cakesに限らずマスメディアの中で、往々にして「偉そうな偉い人の偉そうな振る舞いに必死に抵抗した人が潰されてしまった」光景をいっぱい見てきたからです。「どの会社が/媒体が」じゃなくて、「誰が」の単位で常に見たい。

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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abbey_road9696 〝cakesに限らずマスメディアの中で、往々にして「偉そうな偉い人の偉そうな振る舞いに必死に抵抗した人が潰されてしまった」光景をいっぱい見てきたからです。「どの会社が/媒体が」じゃなくて、「誰が」の単位で常に見たい〟 https://t.co/pOTT8k15ve 8日前 replyretweetfavorite

nachiko541 |牧村朝子 @makimuuuuuu |ハッピーエンドに殺されない https://t.co/hDKdPVMfqa 22日前 replyretweetfavorite

LilyLove825 https://t.co/N3a8SOuy6l 24日前 replyretweetfavorite

deco_can ”自分の人生の選択をいつまでも誰かの許可制だと思ってしまう人” ここにドキッとした。私も昔はそんな一面もあったのよ。笑 25日前 replyretweetfavorite