10月19日に公開されたぼくの記事について

10月19日に公開された本連載の記事「大袈裟もウソも信用を失うから結果として損するよ」を削除し、cakes編集部からのお詫びを掲載しました。今回の記事は、この問題を受けて幡野広志さんが書かれたものです。記事を削除するまでの経緯、連絡が取れた相談者様とのやりとり、改めて幡野さんが書かれた回答の順で掲載されています。
編集部が事前に記事を確認できる立場にありながら、私たちの認識不足や当事者への配慮の不足によって、今回の件が生じてしまいました。相談者様、DV・モラルハラスメント被害者の皆様にお詫び申し上げます。多様性を重視して、特に弱い立場の方が声をあげて届けられるような社会を促進するべき私たちが起こしてしまった責任は非常に重いと捉えています。今後、専門家や当事者の方がたから学び、多様性ある社会へと前進させるため、本メディア上での具体的なアクションを続けていきます。

まず、19日に公開された記事が発端でDV被害の二次被害を増長させてしまったこと、DV被害の経験者の方を苦しめてしまったこと、DV被害について無知であるにも関わらずウソと決めつけて記事を書いたことを、深くお詫びします。申し訳ありませんでした。

19日に記事を公開したあと、22日の未明に、相談者を名乗る人から「夫に記事がバレそうなので削除してほしい」とお願いするメッセージがTwitterに来ました。正直なところ本当に相談者さん本人なのか判断することはできませんでした。

しかし「あなた本当に相談者本人ですか?」と聞くことは再度の疑いをかけることであり、また本人が相談者であることを証明するのは困難であるため、編集部に記事の取り下げを依頼しました。

しかし、結果として削除を依頼してきたアカウントは、相談者さんではないニセモノでした。どういう意図でなりすまして削除依頼をしたかは不明ですが、そもそもなぜニセ相談者さんとわかったかというと、記事の削除後に本物の相談者さんからメッセージが届いたからです(本人にしか知り得ない情報が入っていたので、今度は本物と判断できました)。

(以下、ご相談者からいただいたメッセージ)

先日主人との関係について相談させて頂いた者です。
私の予想以上に反響があり、色々な意見を見ました。

中には相談内容以前に、そもそも本当に23歳なのか、戸建てを建てたと言ってるけど辻褄が合ってないと書かれていて、そんな所まで気にするのかというのが正直な感想でした。
私にとっては、いちいち人に説明する必要のないくらい、普通のことだったので。
でもそういった反応は、今回が初めて言われることではなく、日頃周りからも言われていて、やっぱりどこも同じだなぁと思いました。

今回幡野さんに私が相談をしたのは、何でなんだろと少し考えました。

日頃から幡野さんのコラムは好きでよく拝見させて頂いていました。
ありきたりな感想なんですけど、考えさせられるというか。

そもそも、主人とは私が中学3年生、主人が高校2年生の時に知り合いました。

だからか夫婦としての問題を、客観的に見られず、私の中ではずっと夫としてでもなく、父親としてでもなく、主人個人として、ばかりを考えてしまっていました。
言い方は悪いけれど、それでも現実問題、嫌でも夫であり父親で、私自身も、妻であり母なのです。

私の両親はずっと不仲で、自分自身子供の時を思うと心が痛くなる時がありました。
なぜ離婚しないんだろうと。
それでも今仲良くなっている両親をみると、これでよかったと思うしかないと思っていました。自分自身も母になり、余計にしんどさが分かるからこそ。

子供にそんな思いをさせたくない、子供のせいにしたくない、主人がかわいそう、自分がかわいそう、色んな考えがループしてしまって、何を今すべきなのかわからなくなってしまったのです。

何も考えない方が楽だなぁと。

でもそれが一番怖いと漠然とだけど、思っていて何とか思考を働かせなければと思っていました。
だから幡野さんに相談すれば、何かを考えるきっかけになるかもしれないと思って相談しました。

今回頂いていた回答の真意は、私には分かりませんが、言葉の解釈はあくまで受け取る側が判断するものだと私は思っています。
だから、私の文章に、嘘や大袈裟を感じたなら、少なくとも幡野さんの中ではそうなんだと思います。

その後も相談者さんとのやりとりを重ねました。その中で最初の相談ではわからなかったことを教えてもらうことができました。また、たくさんの方が心配をされていましたが、彼女は現在、安全な状況にあります。

ここから下のメッセージは、彼女の許可をもらって、その後のやりとりをcakesの編集さんにまとめてもらったものです。この記事は彼女に確認をしてもらったうえで掲載しています。

私の両親は幼い頃の私への引け目もあってか、人よりも早い結婚や出産を反対する事なく、私の人生として考えてくれ、応援してくれていました。

主人自身も、今なら間違いなく虐待だと言えるような環境で育ってきていて、大人になってからもその苦しさに悩まされていました。
ただ、義父が絶対の家庭で、義父にはなかなか意見を言えないようです。

ただ、最初の相談の中に書かせて貰っていたかと思うんですけど、私の知らないうちに旦那が起こしていた事故があり、それは勤務中に起きた事故だったようで、そこから少し義父も思う所はあったようで、初めて私のことを心配していたみたいです。

義父は主人のメンタルケアについて、提案をしたときには激怒していたので、その面ではあまりアテにならないですが、体裁はとても気にする人なので、とりあえずでも距離を置くことはできるかなと思います。

結婚当初は、やっぱり若いからと言われる事も多く、人よりちゃんとしなければいけない、不幸そうに見えてはいけないと思ってきました。それは多分主人も同じだったと思います。

ですがそうしていくなかで、今度は若いのにしっかりしてるね、お金に恵まれてなんの苦労もなさそうでいいねと言われることが多くなり、家庭内での問題を人に話すことが怖くなってしまいました。

こうやって話していて、色んな方の意見を見て、まずは自分達を見つめ直す時間が必要だったのかなと思いました。


最初の記事についてですが、既に消去されていますし、このままでいいかなと思います。
もし今後掲載した方がいいと幡野さんや編集の方達で判断されれば、掲載して頂いても大丈夫です。そこの判断はお任せします。

ただ、削除したものにかわる新しい回答は、書いて貰えたらありがたいです。
多分自分のことに置き換えて苦しんでいる方もいると思うので。
一つだけお願い出来るのであれば、消去に至った経緯のみ訂正をお願いしたいです。
見なければいいのですが、なぜ相談したくせに記事を今更消せと言ったのかと言われてる方も居るので。
ごめんなさい、正直これ以上傷つきたくないのが本音です。
よろしくお願いします

長々とすみません。
最後に一つだけ。
誠意のある対応、温かい言葉をありがとうございました。

まずは、本当に申し訳ありませんでした。メッセージでやりとりする中でなんどか書かせてもらいましたが、改めてお詫びします。

たくさんの人に指摘を受けて自分なりにも調べたのですが、配偶者からのDV被害として、みきさんのケースはよくあることだそうです。DVは圧倒的に男性からが多く、女性からすれば自分も被害者になる可能性のある身近な犯罪です。

このことは、ぼくは男性なので女性に比べれば被害に遭いにくいし、結婚してる男友達がDV加害を告白することもないので(そもそもDVという認識がないのだろうけど)、認識ができていませんでした。

あるデータでは、約3割の女性がDV被害を経験しているそうです。そもそも被害を受けてもそれがDVであることを認識していない人もいるだろうし、水面下ではおそらくもっと多いのでしょう。それが4割なのか5割なのかわかりませんが、そう考えるとかなり高い割合ですよね。

もちろんDVというものが存在することは認識していたけど、きっとぼくが想像をするよりも遥かに多くDVは存在するんですね。夫婦間ということで被害が見えにくく、被害から抜け出すことの難しさも容易に想像できます。みきさんの相談を「大袈裟」や「ウソ」といったことで、世間へのDV二次加害につながる、みきさん自身にDVの二次加害をしていると指摘をたくさんいただきましたが、まったくその通りなのだとおもいます。

きっと加害も被害もDVであると認識できていない人もいるような気もします。DVをDVだと認識できている人は、もしかしたら少数かもしれません。ぼくも、妻にたいしてDVをしてる認識は全くないけど、もしかしたら妻からするとDVであると感じた日もあったかもしれません。DVについて調べていく中で、常に自戒していかないといけないとおもいました。

それを踏まえて読み返してみても、ぼくの回答は全く的外れと反省しました。そしてDVについて無知であるにもかかわらず、回答をしたことを申し訳なく感じています。みきさんとメッセージのやりとりをして、たくさんの人に指摘をしてもらって、すこしだけ勉強もしはじめて、今はみきさんがウソをついているとはおもっていません。本当にごめんなさい。

だから反則かもしれないけど、今回の回答は、保留にさせてください。たぶんいまのぼくには、まだ答えられる相談ではなかったんだとおもいます。これからぼく自身もDVについて学んでいくし、cakesの編集部の人たちと一緒に講演や研修に参加する相談もしています。

だからいまはまだ、みきさんの相談には答えることはできないのだけど、いつか必ずもう一度答えさせてください。

それからメッセージを送ってくれて本当にありがとうございます。ぼくがこんな状況にしてしまったのに、直接メッセージを送るのって勇気がいりますよね。意図したかどうかはわからないけど、ぼくはみきさんとのメッセージのやりとりで気持ちがすこし楽になりました。

なにか恩返しをっておもってるから、困ったことや、やってほしいことがあったらいつでも頼ってください。わりとなんでもできるとおもいます。本当になんでもいいですよ。写真を撮ってほしいでも、話を聞いてほしいでも。

こういうときに「お金以外でね」なんてことをいって笑いをさそったりするんだけど、とくにお金に困ったらすぐに連絡してください、遠慮なく。DV被害から逃げるにはお金が必要だという現実も知りました。

またメッセージ送りますね、ではまた。

今週の幡野さん

愛媛に行ってきました。

この連載について

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幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。

幡野広志

写真家・幡野広志さんは、2017年に多発性骨髄腫という血液のガンを発症し、医師からあと3年の余命を宣告されました。その話を書いたブログは大きな反響を呼び、たくさんの応援の声が集まりました。想定外だったのは、なぜか一緒に人生相談もたくさ...もっと読む

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