第5回】蓼食うナンパ師たち

WEB系文化系女子okadaicこと岡田育による、カリカリのパンのはじっこのような味わい深い日常エッセイ。今回は、この夏のニューヨーク一人旅で岡田さんが出会ったナンパ師たちについて。旅とナンパを通じて岡田さんが考えた、日本とニューヨークの「美」の違いとは。

 東京で暮らしていてナンパされた経験がほとんどない。あったとしても、10代の頃に背後から「5万でどう?」と囁かれたようなやつだ。どうせ私よりこのセーラー服が目当てなんでしょ! と卑屈にならざるをえない。あるいは、日本語が流暢すぎるビジネスマンとかヨボヨボの英国老紳士とかが、道端で突然「嫁に来ないか」と誘ってくるようなやつだ。どうせ配偶者ビザが目当てなんでしょ! と卑屈にならざるをえない。同世代の同国人の男子から「ねえ彼女、ちょっとお茶しない?」と誘われるような、ごく一般的なナンパをされたことは、ほとんどない。キャッチセールスや風俗の勧誘だって、道行く女たち全員に声を掛けるのに私だけは避けている、気がする。そう嘆いたら「あんな猛スピードで一目散に歩いてたらキャッチする気も起きないよ……」とツッコまれた。オタクは毎日が競歩ですからね。

 というわけで、私はいわゆるナンパに免疫がない。ちょっと口笛を鳴らされたくらいでは我がことと思わずに通り過ぎてしまう。一方で、道を訊かれたり普通に話しかけられたりすると、それがナンパ(や物乞いや宗教勧誘)の手口とは気づかずに、立ち止まって耳を傾けて親切に応対してしまう。相手との言語コミュニケーションが困難な場合は、尚更だ。かくして海外旅行中は、体感ナンパ遭遇率が日本国内より高いように感じるのだった。今年の夏休み、一人旅でニューヨークに滞在していたときも、あちこちで話しかけられて、お茶に誘われた。

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ハジの多い人生

岡田育

趣味に対する熱量の高いツイートと時事に対する冷静な視点でのツイートを自在に繰り出すWEB系文化系女子okadaicこと岡田育。 普通に生きているつもりなのに「普通じゃない」と言われ、食うに困らず生きているのに「不幸な女(ひと)」と言わ...もっと読む

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