友人の高広伯彦氏(マーケティングエンジン代表)が、9月末に『インバウンド・マーケティング』という書籍を発刊しました。
インバウンド・マーケティングという英語を私なりに和訳すると、「呼び込みマーケティング」です。
これまでのマーケティングが、どちらかというと消費者に向けてひたすら商品を宣伝する広告を浴びせかけ、懸賞やおまけ、値引きなどで消費者の興味を引いて買わせようとしていた(アウトバウンド)のに対し、「消費者が関心を持つタイミングで、関心を持ちそうなメッセージやコンテンツを消費者に提供することによって、顧客自らが自然にそのメッセージやコンテンツ(とその先にある商品)を受け入れ、支持するようにし向ける」ことを目指すマーケティングの考え方です。
インバウンド・マーケティングというコンセプトが生まれたのは2006年ですが、米国では2009年頃から、また日本では2011年頃からこの言葉が広く人口に
その背景には「広告が人々の関心の的になっていない」、もっと言えば「人々が広告を反射的に避けるようになっている」のが、広告主をはじめとする誰の目にも明らかになってきたことがあります。
ちょうど米フェイスブックが、自分の友だちがアップした近況報告や記事、写真などをユーザーが最初開く画面に表示する「ニュースフィード」というサービスを始めたのが2006年でした。フェイスブックのニュースフィードを見れば、消費者がいかに企業の発信する情報に関心を払っていないか、一目で分かるというものでしょう(最近、ニュースフィードにも広告が増えてきていますが、うざったい以外の何ものでもありません)。
デジタル情報通信技術の発達によって、消費者は企業やマスコミの流す情報ではなく、自分たちの持つ情報を自由にやり取りできるようになっており、もはや企業側に「広告」で消費者に喜んでもらえるほどの情報価値はなくなりつつあります。インバウンド・マーケティングは、こうした中で新たな時代のマーケティングのあるべき姿を示す必要から生まれてきたコンセプトと言えます。
「世界中から数十人程度の顧客を集める」ことが可能に
押しつけがましい広告や、強引な販促ではなく、消費者が関心を持ったタイミングで、製品やサービスに関するメッセージやコンテンツを消費者の手の届くところにそっと置いておくことで、それを自然に消費者に受け入れてもらえるようにするというインバウンド・マーケティングの考え方を聞いて、「はぁ?」と思う人もいるでしょう。
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