「僕はどっちなんですか?」「TUBEだよ」
昨年読んだ本の中で、最も動揺した1冊が、WANDSのヴォーカリストだった上杉昇『自伝 世界が終るまでは…』である(デビュー25周年のアニヴァーサリーボックスとして、ライブCDやDVDと一緒に封入されているため、書店では流通していない)。学生時代にハマっていたバンドのメンバーが今になって「実は……」と激白することにそれなりに抗体を持ってきたはずだが、上杉のそれは自分の想定を上回っていた。
デビュー前、ビーイング音楽振興会に通っていた上杉は、「ロック・バンドでヴォーカルをやらないか」と誘われたものの、バンドの方向性が一向に伝わってこないままだった。上杉は自分の好みであるハードロック方面を希望していた。しびれを切らし、「僕はどっちなんですか? ラウドネスのほうですか、それともTUBEのほうですか?」と聞くと「TUBEだよ」との答え。「俺としては正直、不本意だった」が、「そこそこ有名になれたら、自分のバンド活動もやりやすくなる」との理由で話を受けたのだという。究極の二択を投げつけ、そうじゃないほうの答えを飲み込んだのが上杉にとってのWANDSのスタートだったのだ。
上杉昇は「スラムダンク」を見たことがない
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