カルノミコとカルノオオイラツメの恋
允恭二十三年三月七日、カルノミコ(木梨軽皇子)を、皇太子に立てました。
容姿端麗で、見る者は、ついうっとりするほどでした。同母の妹・カルノオオイラツメ(軽大娘皇女)もまた艶妙でした。皇太子は以前から、カルノオオイラツメと結婚したいと思っていましたが、罪になることを恐れて黙っていました。
しかし恋慕の情が高まり、ほとんど死にそうなまでになりました。そこで、
「空しく死ぬより、たとえ罪になっても忍ぶことなどできない」
と、ついに密かに通じて、悶々とした気持ちが、少しなだめられました。そしてこんな歌を詠みました。
あしひきの※1 山田(やまだ)を作り
山高(やまだか)み 下樋(したび)※2を走(わ)しせ
下泣(したな)きに 我が泣く妻
片泣(かたな)きに 我が泣く妻
昨夜(こぞ)こそ 安く膚触(はだふ)れ
(※訳:
山田を作り
山が高いので下樋を通すように
私が忍び泣きに恋う妻よ
私が独り泣きに恋う妻よ
昨夜は、心安らかにその肌に触れたのだ)
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