わかりやすい伝え方の法則 【第11回】 わかりやすく説明するために大事なことは? 〈その2〉

「わかりやすい説明」には、「相手に理解してもらいたいと思う意識」と「相手に合わせて表現を変えること」です。これからふたつめの「表現」についてお話ししていきます。「相手に合わせた表現」ができるようになると、難しい内容も相手が分かるように伝えることができます。じつは、これが「わかりやすさ」の本質です。わかりやすい説明ができるかどうかは、突き詰めて考えると「表現の使い分けができるかどうか」なのです。


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相手に合わせた表現にする ~よりわかりやすく説明するために

「わかりやすい説明」に必要なのは、「相手に理解してもらいたいと思う意識」と「相手に合わせて表現を変えること」です。ここから、ふたつめの「表現」についてお話ししていきます。この「相手に合わせた表現」ができるようになると、難しい内容も相手が分かるように伝えることができます。

じつは、これこそが「わかりやすさ」の本質です。わかりやすい説明ができるかどうかは、突き詰めて考えると「表現の使い分けができるかどうか」なのです。

ここでみなさんに質問です。よく「専門用語は難しい」と言われますが、なぜでしょうか? 本当に専門用語は難しいのでしょうか?

説明の中に専門用語が出てくると、聞いているほうは一気に難しく感じます。でも、その専門用語を知っている人からすれば、スッキリしていてわかりやすい表現に聞こえます。

つまり、専門用語自体が難しいのではないのです。そうではなく、専門用語を理解できない人にとっては難しい、というわけです。ですから、専門用語が分からない人には、それに代わる一般的な表現を使って説明すれば、ちゃんと理解してもらえます。

でも、逆に考えると、専門用語を知っている人に、それを使わずに表現をしたら、かえって分かりづらくなってしまいます。

たとえば、誰かに「私は今日、家電量販店に言って、『パソコンを操作するための機械で、コードが付いていて、カチッと押すやつ』を買ってきました」と言われたら、「マウスでしょ?」と聞き返したくなりますよね。もちろんマウスは今では専門用語とは言えませんが、マウスを知っている人からすれば、はじめからその言葉を使ってくれた方がすっと頭に入ってきます。

一方、マウスを知らない幼児には、「お茶碗をさかさまにしたような形で、そこからヒモが出てるもの」と説明してあげたほうがいいかもしれません。

また、パソコンに詳しくないお年寄りには、「パソコンの操作をするリモコンみたいなもの。ネズミみたいなかたちして、しっぽみたいなコードがついている」という表現をしてみる。細かいことですが、お年寄りに対して「お茶碗を逆さまにした形」とか「ヒモが出てる」とかいうと、お年寄りは本当にお茶碗を逆さまにした円錐状の物体をイメージしてしまうかもしれませんね。

要するに、ある人にとってわかりやすい表現も、別の人にとっては分かりづらい表現になるのです。だから、わかりやすい説明をするということは、相手によって表現を変えて、「相手に合わせた表現」をするということなんです。

これができるようになれば、聞き手の年齢や知識を問わず、自分の説明を理解してもらうことができます。つまり、わかりやすい説明ができるようになるのです。

「意識」を土台にして、その上で適切な表現ができるようになれば、誰でも、よりわかりやすい説明ができるようになります。

相手に合わせた表現をするために必要なことは?

ここからは「相手に合わせた表現」の練習方法をお話ししていきます。

さきほどもお伝えしたように、これこそが「わかりやすく説明する技術」の本質なのです。この「表現の使い分け」ができるようになると、みなさんの説明力は格段に向上します。

そして、「相手に合わせた表現」ができるようになるためには、「相手が理解できるように柔軟に表現を変える力」を身につける必要があります。

同じことを別の言葉で表現する練習

相手に合わせて表現を変えなければいけません。でも、これがやっかいです。最初は注意しつつも、話が進んでいくにつれて、どうしても自分が使い慣れている表現で説明してしまうからです。

ただし、最初にお伝えしたように、これは「頭がよくない」「センスがない」といったことが原因ではありません。この原因は、「頭の堅さ」です。頭が堅いと、自分が使いなれている表現だけでしか説明できなくなるのです。相手に合わせて、表現を変えるためには、頭の柔軟体操をする必要があります。

ただし、ここでいう「柔軟体操」とは、「発想力を豊かにする」という類のものではなく、「同じことを別の言葉で表現する練習」です。

多くの人が、日々決まった生活を送っています。同じ家で寝起きして、同じ会社や学校に通います。転職したり、社内異動することもありますが、そう頻繁にあるわけではありません。そうすると、必然的に毎日同じ人と顔を合わせて、決まった人たちと会話やメールのやり取りをしているわけです。

そうなると、誰でも、自分が使い慣れている言葉や表現方法に頼って意思の疎通を図るようになります。同じメンバーで会話をしている時に、わざわざいつもとは違う言葉づかいで話したりしませんよね。その方が相手に伝わりやすいからです。

でもその結果として、気がつくと、決まり切った表現しかできなくなっています。これでは、体と一緒で、知らず知らずのうちに「可動域」が狭まってしまいます。だから、時には柔軟体操をして、表現の幅を広げておく必要があるわけです。

「いや、自分は営業マンだから、毎日違うお客さんと会っている」と反論される方もいらっしゃるでしょう。しかし、そんな方も、日々会っているのは、「自分と同じ世界の人」のはずです。たとえば、大企業を担当している営業マンだったら、会うのは「一流の大学を卒業して、就職し、毎日スーツを着てオフィスで仕事をしている人たち」です。そこに「女子高生」はいませんよね。

「同じ言葉で通じる相手ばかりなんだったら、そのままでいいじゃないか」

そんな声も聞こえてきそうですね。でも、当然ながら、私たちの周りにいる人は全員同じ人間ではありません。そのため、同じ言葉を理解できない人がいたり、違うテーマが全く理解できない人がいたりするんです。そんなときに、頭が堅くなっていると、相手にわかりやすく説明することはできません。

スポーツの前に柔軟体操をするように、説明の前に、この「柔軟体操」をしておけば、誰でも表現の幅が広がり、説明が格段にわかりやすくなります。

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