2.4kmの祖師ヶ谷大蔵商店街、駅寄り300mに立地。サンプルケースが目印
祖師ヶ谷大蔵商店街(世田谷区)で唯一、親子3代続く洋食屋だ。そう、定食屋ではない。だが、名物ポークジンジャーをはじめほとんどのメニューに、煮干しとカツオのだしがしっかりきいた味噌汁とご飯がつく。煮干しは前夜から水出しにしている。丼ものもある。 じつは1999年まで近所にあった成城警察署が得意先であった。署への出前と署員がメインの客である。ほかは沿線の学生と地元客だ。店主の兵藤智(さとる)さんは言う。
鮮やかな卵黄色のオムライスは、埼玉県越谷市の栗駒ポートリーのあおばを使用
「だからついこの間まで、自家製のぬか漬けを添えた定食も出していたんです。もとは父が、新橋から中華の料理人を引き抜いてきたので、タンメンやワンタンメンの出前も多かった。冷やし中華は2年前にやめたけどいまだに作ってと言われます」
智さん(左)と長男、由弥さん
創業1961年。父の昭夫さんは、「祖師ヶ谷大蔵にナイフとフォークの店なんてしゃれた店は流行らない」という周囲の声をはねのけ、洋食と中華が両方楽しめる店を出した。
智さんは大学卒業後、フレンチの店で10年の修行を経て入店。92歳の昭夫さんが引退した現在は、息子の由弥さんとふたりで鍋をふる。ホールは母の照子さん、妻の寿志子さん、由弥さんの妻ありささん、妹の忍さんと、家族経営ならではの温かな空気が流れる。とくに朗らかな寿志子さんは店の太陽だ。初めての一人客にもとことん優しい。
牛すじを1時間半グリルするところから作るデミグラスソース。創業から継ぎ足している
創業以来守っているのは「手間をかける精神」である。この日もデミグラスソース用の牛すじをオーブンで1時間半グリルしていた。焼き上がったら、創業以来継ぎ足しているソースに加えてさらにじっくり煮込む。これをからめたポークソテーやハンバーグは最強、間違いのない味だ。
オム・コロ1350円。創業から変わらぬ人気メニュー。ミニサラダ、スープ付き
フォンドボーはもちろん、千切りキャベツにちょっと添えられたドレッシングやマヨネーズ、焼肉のタレもすべて手作りである。
クリームコロッケにひとすじかかったデミグラスソースも深い味がするので、テーブルに置いてあるソースもまさかと思いながら尋ねると。
「さすがにソースは市販ですよ。ただ、ちょっと砂糖や一味唐辛子を加えて火を入れています。忙しいときは冷ます時間がなくて、熱々のまま出しちゃうことも」
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