美人はフェミニズムを語れていいな〜 というモヤモヤ

今回、牧村さんのもとには、「フェミニズムを語る美人を見るとイライラしてしまう」という大学生からのお悩みが届きました。自分がフェミニズムを語ると、「フェミニストはみんなブス」という主張が真実になってしまうと考える相談者さん。この思考から抜け出したいという彼女に、牧村さんは相談文の裏側に見えた問題の本質を指摘していきます。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや

どうもこんにちは。美人です。

毎週水曜朝10時、「ハッピーエンドに殺されない」という人生相談の読み物を、このcakesで連載しています。物を言ったり書いたりするのが仕事です。

今回は、「美人だからはっきり物が言えるんですね、羨ましい」というおたよりをいただきました。いわく、「自分もフェミニズムとか勉強して楽になりたいけど、ブスがフェミニズムをやったら『やっぱりフェミニストはブスばかり』みたいなこと言われるしな」と。

「そんなことないわ、わたし元から美人なわけじゃないし努力してるの。あなたも頑張って言いたいことを言っていいのよ✨」……みたいなことを言っちゃあつまらないよねって、まずははっきり言いますね。

ええ。そうです。

わたしは美人です。

「そんな、美人なんかじゃないです」って謙遜ポーズはしません。

「女性はみなそれぞれの美しさを持っているんですよ。LOVE YOURSELF !」みたいな高みからのご発言をなさることもしません。

ただただ、こう言うだけです。「わたしは美人です。つまりどういうことかと言うと、わたしはわたしの肉体をわたしが気持ちいいように手入れして生きております。ままならないながらも美しく手入れした盆栽を生きるように、ままならないながらも美しく手入れした肉体を生きているのです。そう、BONSAI BIJIN。それについて、わたしの肉体を生きていない人が外からいろいろ言うでしょうが、そのような人肉品評会の審査員気取りのみなさんがおつけになるスコアにわたしは特に興味がありません。なぜならわたしは、人肉品評会のみなさんもまた人肉をまとって生きているのだということを見据えているので。人のことをブスだの美人だの言わなければ気が済まないその人の内面の葛藤にお付き合いして差し上げる義理が特にないので。そして何より……わたしはわたしをわたし自身で美人だと言い切ることで、一切の品評を突き返しているので。」

でも、わたしがこんなふうに言えるようになるまでの道のりも、わたしが「わたしは美人です」と言った時に「は?」より「カッコいい!」って言われる回数が多い顔面で生きているから楽できたんだよなっていうのはやっぱりあるんだよね。

キレイです。キレイごとがきらいです。謙遜も押し売りポジティブもなく、考えていきたいと思います。人肉品評会に陳列されて審査員気取りの皆様に「ブス」とか「美人」とかスコアづけされているおのれの肉体を、どう、取り戻すか。って話を。

まずはおたよりからです。

こんにちは。いつも連載を楽しく読ませていただいています。
私は大学生の女です。そんな私の悩みについて相談させてください。

私には美人なお友達がいます。その子の顔を見ただけで嬉しい気持ちになるし、ずっと友達でいたいと思いますし、コロナが流行る前は二人で何度も旅行を楽しみました。だけど知り合って四年近くが経とうとする今、彼女を見るともやもやイライラするようになってしまいました。

お友達はフェミニズムについて研究しており、卒業論文はもちろんフェミニズム関係です。私はそんな彼女を見て「すごいな」と思うと同時に、美人はフェミニズムを語れていいな〜ともやもやしてしまいます。私は自分に自信がありませんし、彼女のように美人でもなければ親から嘲笑されるレベルのブスです。着替えや化粧をするためには精神安定剤を服用する必要があります。そんな私がフェミニズムを語るのはおかしいのではないか、と思ってしまいます。

実際、フェミニズムを敵視するミソジニストの方々はよく「フェミニストはみんなブス」だと言っています。それを聞いて「そんなわけないやろ馬鹿か?」と思うことは思うのですが、「それじゃあ私がフェミニズムについて勉強するとミソジニストの言い分が真実になってしまう!」と恐縮してしまいます。私は性別はただの属性だと考えていますし、「〜らしくしなさい」という言い分が嫌いで、反発してはよく親に怒られていました。

だけどブスが女性の権利を叫ぶのはおかしいと本気で考えてしまいます。牧村さんの連載を読んでいるとふと「牧村さんは美人だからはっきり物が言えるんだな、羨ましいな」と思います。ルッキズムに毒されています。私はどうすればこのような思考から抜け出せるでしょうか?お友達を見るとつらくなります。乱文失礼致しました。
(一部改行を加え、全文掲載しました)


はい。まず感想を申し上げます。
その後、「この話のキーワードは“ブス”ではなく“親”では?」という話をしますね。

じゃ、感想からいきます。いいですか、これは感想ですよ、判断ではないです。個人の感想であると念押しした上で聞いていただきたいです。はっきり言いますね。

それね、

まだ友達になることができていないと思いますよ。

これからなれるけど。

「二人で旅行を楽しむ」ことは、友達になっていく良いきっかけではあれど、証明ではないのではありませんか。友達であるはずのその方に、あなたは、今回話してくださったようなことを打ち明けたことはありますか? その方がそもそもなぜフェミニズムを研究しようと思ったのか、そしてなぜ続けているのか、知ろうとしていますか? それは「女性の権利について声を上げることができる美人だから」だと思っていらっしゃるんですか? フェミニズムを専門とするその方と、「ブスはフェミニズムをやる権利がないと思ってしまう」ってことについて、話し合ったことはありますか?

きっとね、あなたがその方を好きだと思うのは、あなたの欲しいものをその方が持っているからでしょう。今の時点であなたがその方に抱いている感情は、「欲しい」なんだと思う。「わかりあいたい」とかじゃなくて。「コロナ終わったらどこ行こっか」って話はできても、「最近あなたを見るとイライラもやもやしちゃう自分がいるんだよね」って話ができていない。そんな状態であるならば、あなたはその方を知らないし、その方もあなたを知らないんだなって思います。

お互い知らないままになっちゃうこの感じ、経験がある。 「どっちのせい」とかじゃなくて、経験をしゃべりますね。

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

kome_gohan_ 牧村さんの文章好きだなー https://t.co/nRBoas3dm3 4日前 replyretweetfavorite

makimuuuuuu 薔薇の処刑ならぬ百合の処刑 https://t.co/f6vlVtBmlg https://t.co/yFhaL9eDza 9日前 replyretweetfavorite

makimuuuuuu 女性と女性が一緒にいるところを外野から「片方美人で片方ブスだよね」って容姿ジャッジされるというクソ展開が起こっている時に発生しがちなこと、傾向と対策です。「させるか✋」って話 https://t.co/f6vlVtBmlg https://t.co/kPTCuRfbwv 9日前 replyretweetfavorite

koukounaries なんちゅう力強い言葉だ。 9日前 replyretweetfavorite