新連載『sauce by spoken words project』始まります!

cakesとファッションブランドspoken words projectのデザイナー飛田正浩さんが組んで、今月からある連載がスタートします! 始めるにあたって、飛田正浩とは何者なのか、spoken words projectというブランドをご存知の方もそうじゃない方も知っていただきたく、インタビューを行いました。最終回となる今回は、飛田さんが手掛ける企画やイベント、そしてcakesでも連載される、リメイクプロジェクト『sauce』について伺います。

保育園で子どもたちのランウェイショー

— 最近は自身のブランドと別の活動もされていますよね。

飛田正浩(以下、飛田) そうですね。50歳になった時、このままずっとアパレルとしてやっていくのだろうかと思い始めて。例えば、現代美術にしても、伝統工芸にしても、ファッション的にいろんな要素がいっぱいあるじゃないですか。spoken words projectもそうだと思っていて。それを年に二回の展示会の洋服に閉じ込めて良いのかって。

— で前回の最後に伺ったspoken words projectと生地メーカーのコッカとのコラボレーションブランド「3min.」が誕生するんですね。

飛田 はい。「3min.」はまさしく、自分で作って自分で楽しむみたいなこと。布をせっかくデザインしているのに、「布としてはすごくかわいいから欲しいんだけど、何を作ったらいいんですか?」という質問が多いというのを聞いたんですよ。それで、コッカと何か企画立てましょうってなったんです。そこからファッションデザインも提案できる、ソーイングブランドにしましょうっていう話になって。  自分で縫って着るとか、その人に着てほしいなと思って、縫ってプレゼントしてみるとか、自分で作る服の意味合いみたいなものをもう少しみんなに感じてほしいなと言うのはありました。

— それは、ご自身の服を作る楽しさからですか?

飛田 過去に自分が母親に縫ってもらって、少しくすぐったいのはあったけど、やっぱり嬉しかったんですよね。ジーパンの膝が破けてあーあと思っていたら、後日そこにあて継ぎがしてあったことが何気に思い出に残ってるんですよ。
 だから、既製品じゃなくて誰かが思いを持って縫ってくれる服のあるべき姿みたいなものをみんなに知ってほしいなっていうのは、このブランドを立ち上げた時にみんなに話していました。

— 若者を対象にしたワークショップをたくさんやられているのもその思いからですか?

飛田 そうですね。世田谷区の生活工房という施設と組んで、「14歳のワンピース」というワークショプを10年前からやっているんです。中学2年生の女の子が、喜びだったり悲しみだったりいろんなことを語ってくれるのを絵にして、それをテキスタイルに落とし込んで出来上がるワンピースっていうのが非常によかったんですよ。

飛田 そこにディレクターの伊藤ガビンさんが見学に来てて。「宮崎県の都城市の図書館に、新しい空間をつくろうとしてるんだけど、ファッションで何かやれないかな?」と誘っていただきました。

— なにを作られたんですか?

飛田 図書館内にファッションラボを作ったんです。切ったり縫ったりもできるし、シルクスクリーンで布にプリントもできる。それで年に数回、少し大きなお題を持って行って、若者と地元のお祭りに向けてファッションアイテムを作ったり。世田谷の「14歳のワンピース」のニュアンスを持ちつつも、都城ならではのお題を作って、ワークショップをしに行っています。

— 個人的にすごく面白いと思ったのが、保育園で行なっているワークショップで。

飛田 そうですね。最初はある保育園の園長から、なにか面白いことができないかってお誘いを受けたんです。それで、ちびっこの様子をみてみよう、という感じでワークショップをやったら、足跡つけたり手形つけたりする作品を作ったりしました。でも、せっかく僕らプロが教えるんだからもっと面白いことができるんじゃないかなと。

— なるほど。

飛田 それで子どもたちに、自分で本当に着たい服を作ってみない?って聞いたら、子ども達の目の色が変わって。園児たちは自由に描いていいよと言われるのに逆に飽きていたのかもしれないですね。僕たちがお手本をどう提案するかによって、かなり面白いものが出てきたんです。そこに可能性を感じて、長丁場でやってみましょうと月に一回のペースで一緒に洋服を作っていったんです。そしたら本当にいいものがたくさんできて!

— 保育園の中での活動なので、写真を出せないのがもったいないですよね。これ、テレビやネットフリックスでやったらすごく良質なドキュメンタリーになるなと思ったんです。

飛田 ね、面白いよね。それで先日、子どもたちが自分で作った服を来てランウェイショーをやったんですよ。泣いちゃうくらいよかったです(笑)。本当にいい顔をして歩いてくれて。お客さんである親御さんや先生たちの盛り上がりも素晴らしかったんですよね。洋服を作っただけなのに、こんなにいい空間やいいムード、いい結果が出たのは嬉しかったし、服の可能性をまたひとつ見つけたと。

— いわさきちひろ美術館でも展示をされていましたよね。

飛田 いわさきちひろさん生誕100周年の記念企画で参加し、一ヶ月だけの限定でやっていました。デザイナーとして商品開発で関わる予定だったんですけど、ギャラリー空間も全部テキスタイルで作品として展示できるのであればお願いしますということで色々やったんですね。

— いわさきちひろの服っていうコンセプトがすごくかっこいいと思って。

飛田 ちひろさんの水彩絵の具のイメージを僕なりに再解釈させてもらって。ちひろさんの絵は、やっぱり絵を分かっている人間が見てもめちゃめちゃうまいんですよ。驚異的。生に近い作品を見たときはもう鳥肌が立って。  
 そう言った意味で、逆にこれは取り組むべきだなって思いましたね。水彩画風に染料使って布を作るということに関しても、浪人時代、水彩タッチに傾倒していた時期もあったので、抵抗は全然なかった。

— 飛田さんが水彩を描けるっていうのもすごい武器ですよね。趣味で描くんじゃなくて、ちゃんと大学で水彩の基礎から学んでいる人、おそらくファッションデザイナーで他にいないじゃないですか。

飛田 そうかもね。実は僕、色んな絵を描くんですよ。打ち合わせで絵を持っていくとこれ誰描いたんですか?って言われるの! デザイナーってそういうもんだと思ってたんだけど(笑)。

海外から問い合わせが殺到したPUMAとのコラボシューズ

— 最近の活動だと、PUMAとのコラボスニーカーはかなり話題になりました。

飛田 これは後で知ったんですけど、プーマのスタッフの中に多摩美の染織を出た人がいて、うちのことを知っていたそうなんです。その人が上の人間に説明して、大人数でここにきたんですよ。何ができるかっていう打ち合わせをした時に、たまたま左右のデザインが違う革のハイヒールを見せたら、これをスウェードっていうPUMAの超定番のスニーカーでできないかな?となって。

— おお!

飛田 その時にいたディレクターが面白い方で、「やりましょう」って言った瞬間、なんかいけるかもってムードになりましたね。とりあえず、裁断前の大きな素材の革に僕がデザインを考えて手作業で刷って、そこからランダムに型を抜いて三、四足サンプルを作ったんです。そしたらめちゃ良くて。

— そうなると、左右違いどころか片足ずつ全部バラバラの靴ですよね(笑)。

飛田 そうです(笑)。そこに集まったスタッフたちも、ヤバい、どうしよう、これはもう止められないねって。

— (笑)。ちなみに靴はどれくらい作ったんですか?

飛田 一番最初は350足で次が400足、次が450足という流れだったと思う。

— 大量生産できるPUMAが、飛田さんが手で刷ったものを少量作るっていうことも面白いんですよね。

飛田 PUMAのシューズを国内で縫える工場で、一足一足丁寧に縫ってもらうということが決まっていたんですけど、そこの工場が真面目だから裁断時に柄のいっぱいあるところを選んじゃうって言うんですよ。僕はあえて柄がいっぱいあるところとあまりないところのバランスを考えてデザインをしているのに。それはやめてくれって僕が言って。そしたら裏に返して無地扱いで裁断しますと。だから全部裁断終わって残った革が来て、うわーここプリント結構こだわった色なのにーって言うのもあったりはしたんですけど。

—苦労したところが(笑)。

飛田 でも、そこを気にして作ってもらうと、わざとらしさみたいなものが出てきちゃうんですよね。それはどうしても避けたいということで、裏のプリントしていない方をあえて表にして裁断してもらったりしたんですよね。


spoken words project and PUMA 「ewohaku」 from KYOT∆® on Vimeo.

— 銀座のドーバーストリートマーケットに置かれたり、かなり反響がありましたよね。

飛田 これ、PUMAの日本法人の企画なんですよ。生産も国内だから、日本にしか流通しなかったんですね。そのせいで海外からなんでもっと売らないんだってめちゃくちゃ問い合わせがあったらしいです(笑)。

— これも飛田さんしかできないことですよね。普通のファッションデザイナーの仕事じゃないし、布屋さんや、染色家、テキスタイルデザイナーにもできないし、あとそもそもグラフィックの方のデザインができないといけないですもんね。ファッションデザイナーになった経緯から現在にいたるまで、飛田さんが積み上げてきたものがあるから可能になっているっていう。

飛田 確かに、僕しかできないかもしれませんね(笑)。

育てられる素材のアイテム

— こちらの布は、画材屋さんのユニフォームで使用されていたものですか?

飛田 天王洲アイルの寺田倉庫の中にあるPIGMENT TOKYOのショップコートですね。絵の具のイメージから、表面は洗いをかけたデニム風のドライな乾いた表情にして、内側を水玉模様にして、リバーシブルのショップコートを作りました。表と裏で岩と水を表現したっていうデザインです。

— このショップコート、商品として発売したら売れそうですね。

飛田 ここに納品されて吊ってあった時は、来る人みんな欲しいって言ってくれて。

— あれ映像で見ただけでかっこいいって思いました。

飛田 自分も欲しいですもん(笑)。布はかなり手塩にかけて作ったので。リバーシブルということもあって、作るのにも手間がかかるので値段をつけると相当な金額になってしまいますね。

— 同じ素材を用いたアイテムが発売されましたよね。

飛田 エプロンやトートバックなどを作りました。このために作った生地、非常に育てられるんですよね。洗えばどんどん色が落ちていくので。例えばインディゴデニムの色落ちって偶然にできたものなのに、同じのが欲しいからって、今はもうデータを分析して再現してるじゃないですか。このショップコートも偶然の色落ちになるよう仕上げていて、ちょっと汚れたら洗濯機でガラガラ洗って、アイロンもかけずにくしゃっと着てもらいたい。色落ちを楽しんで、自分で育てる感じに。

— ジャケットなのに洗濯機で洗えて、くしゃっとしてるのが味になるってすごくいいですね。

飛田 「ボロい」と「かっこいい」の境界線や、色落ちと経年劣化の境界線、プリントが割れてきちゃうことの良さと悪さ。そういう感覚は古着を見てきた目で培われてたのかなって思います。

新連載『sauce by spoken words project』始まります!

— 長々と話してきましたが、デザイン、縫製、テキスタイル、染色、絵、他もろもろ、高いレベルでファッションにまつわる様々なことをこなせる人間は、日本中探してもおそらく飛田さんしかいないように思います。そんな飛田さんが始めたのが、リメイクプロジェクトの 『sauce』なんですよね。これからcakesでも連載が始まるのですが、まず『sauce』が何なのかを飛田さんから説明していただきたいです。

飛田 『sauce』とは、まず、自分のファッションデザイン、ファッションセンスの確認。

— センス?

飛田 技法のセンスではなくて、出されたデザインお題に即座に反応し返答できるセンスの確認。喜んでもらえることは大前提として。 簡単に物を捨てちゃいけないよって声高に言うんじゃなくて、楽しく物を捨てないようにできないかなとかっていうのが最初にあります。それとコミュニケーションっていうのも後付けであるんですけど。

— コミュニケーション、ですか。

飛田 そう。だからまず皆さんにお伝えしたいのは、「家のクローゼットで捨てられずにしまってある服は無いですか?」ということです。捨てられないその理由に、思い出やエピソードがあるならそれを手紙として同封しつつその服を送ってもらう。その手紙の内容をデザインソースにして、こちらでリメイクをするといった感じです。勿論思い出エピソードが無くてもぜんぜん良い、ただただリメイクして欲しい、で大丈夫。
 でも、もう2年以上やっていますが、みなさんかなりエピソードがある! そのエピソードをはさんだコミュニケーションがどんどん服を作らせるんです!

— なるほど! でもコミュニケーションは最初からあったわけではないんですか。

飛田 なかったです。今まで僕は、人と喋るのがあまり好きではないから黙々と物を作って表現しているって思っていたんです。でも実はそんなに嫌いじゃなくて、自分が物を作る理由や衝動が会話から出てきているのかなって最近思ったりしてて。
 あとはやっぱり洋服をすごくひいきして見ているので、洋服って物語が付きまとい始めるじゃないですか。お父さんのジャケットがかかっていたら、お父さんがそこにいるようにも感じるし。

— 情みたいな感情も生まれますね。

飛田 そうだね、「思い出」って何だろう?と。だけど洋服は単なる布じゃないですか。それに何があるのか。いろんな意味で洋服って知りたくなることが色々あって。どうして服が捨てられないのかっていうのも意味があると思うんですよね。
 2年前からリメイクプロジェクト『sauce』を始めたんですけど、利用されるお客さんが、うちのブランドを知っていて、僕らの今までの活動のことも知っているからか、そのお洋服に対する思い出や思い入れをたくさん書いてくれる人がすごくいるんですよ。

— 例えば先ほどの保育園の話や図書館の話にしても、洋服に感情というか、洋服、布以外の機能を持たせようとずっとしているのかなっていうイメージがあります。

飛田 そうですね。音楽聴いて泣いちゃうことって僕普通にあるんですよ。でも服着て泣いちゃうってまだないんですよね。感情が動く服というのがあっていい気がするんです。
   実際リメイクした服で泣いちゃいましたっていうメールも来たんです。服の思い出で泣いちゃったというよりは、元気がなかった時に、送られてきたうちの洋服見たら元気が出るような仕上がりで、思わず泣いちゃいましたみたいな方だったんですけど。だから涙の出方や思い出のあり方が人それぞれでもやっぱ泣いちゃう服っていいよね。そういうものを作っていきたいと思います。

構成:二宮なゆみ

source募集要項
「服を作らず思い出を作ります」
spoken words projectによるリサイクルを目的としたプロジェクトです。あなたのクローゼットで眠っている、着なくなってしまった服を、アトリエのセンスとスキルでリメイクをいたします。いわゆる「お直し」ではないリメイクを目指し、作品となるように作ります。

【条件】
spoken words projectへお支払いいただくリメイク費用がかかります。以下を必ずご確認ください。①重衣料 ¥25,000(税別)
裏付きのコートや裏付きのテーラードジャケット、 裏付きのワンピース、 厚手のブルゾンやレザージャケットなど。 秋冬物裏付きの服。
②中衣料 ¥15,000(税別)
裏なしのコートや裏なしのガウン、 裏なしのワンピース、 ウールのニットやセーター、 ボタンダウンシャツやブラウス。 デニムのジャケットやパンツなど。 春夏の裏無しの服。
③その他 ¥8,000(税別)
トレーナーやパーカーなどのスウェット類、 キャミソールやTシャツなどのカットソー類、 トートバッグやストールなどの小物類など。

デザインはspoken words projectに一任していただきます。
技法や素材の具体的な希望はお聞きすることはできますが、指定はできません。
どうしても嫌なリメイクがある場合は事前にお知らせください。
完成までの日数はそのアイテムによってかわります。
企画の特性上、お気に召さない場合でも、返品やクレームは受けることができません。
また、作品としてそのお洋服のレンタルをお願いをする場合もございます。

申込みは以下のURLからお願いいたします。
https://forms.gle/6phkc2ymoTgPXShm9
または以下のメールアドレスに、服の写真(3枚以上)、その服の思い出、お名前、年齢などを明記の上お送りください。
info@spokenwordsproject.com

採用の際は、こちらから記載いただいたメールアドレスにご連絡させていただきます。

これらの洋服を通した対話を、cakes上に記事として公開させていただきます。
皆様の大切な一着になるよう、心を込めて作ります。

spoken words project 飛田正浩

お知らせ

spoken words projectの2021春夏最新ルックが公開されました。こちらもあわせてご覧ください。

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spoken words project 飛田正浩とは何者か?

飛田正浩

cakesとファッションブランドspoken words projectのデザイナー飛田正浩さんが組んで、今月からある連載がスタートします! 始めるにあたって、飛田正浩とは何者なのか、spoken words projectというブラ...もっと読む

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tobbyspoken @cakes_news https://t.co/iRgtO47Tzs とはいえセンチメンタルな思い出がなくてても、 ただリメイクして欲しい、 でもぜんぜんオッケーです。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite