第4章 決断の痛みを踏み越えよう vol.2 かけがえのない「仲間」たち

決断に伴う心を裂かれるような痛みを、真正面から受け止め、乗り越えてきた堀江貴文さん。離婚・逮捕という大きな出来事に耐えてきた堀江さんがそれでも前向きに生きられるよりどころとなっているのは「仲間」の存在でした。11月5日(火)に発売される堀江貴文さんの書き下ろし単行本『ゼロ——なにもない自分に小さなイチを足していく』の内容を、cakesでいちはやくお届けしていきます。

孤独に向き合う強さを持とう

 決断とは「なにかを選び、ほかのなにかを捨てる」ことだ。
 あなたはAを選んだつもりかもしれないが、それはBやCやDの選択肢を捨てたということでもある。たとえそれが正しいものだったとしても、決断には大きな痛みが伴うこともあるだろう。
 僕がそのことをもっとも痛感させられたのは、離婚の決断を下したときだった。

 僕が結婚したのは1999年、まだ27歳のときのことである。特に結婚願望があったわけではない。付き合い始めて半年あまりでの、いわゆる「できちゃった婚」だ。
 当時は会社が上場を直前に控えていた時期でもあり、僕は多忙を極めていた。
 起業してから3年間、全力で走り続けた。会社に寝泊まりしては朝日とともにパソコンに向かう毎日。旅行に行くことも、のんびり読書することも、飲みに行くことさえほとんどなかった。
 しかも当時は、上場の是非をめぐって他の創業メンバーとの間に激しい対立が生じていた時期で、肉体的にも精神的にも疲れ果てていた。
 きっと僕は、癒やしを求めていたのだろう。そして仕事以外のことを深く考える余裕がなかったのだろう。なんとなく知り合った女性と、なんとなくの流れで付き合い、なんとなくの流れで結婚した。
 たしかに気のよい、一緒にいてリラックスのできる女性だったし、決して悪い感情を持っているわけではない。いまでも年に一度くらいはメールのやり取りがある。
 しかし、家庭的で保守的な彼女と、仕事と効率を最優先に考えていた僕は、完全に水と油だった。仕事や人生設計に対する考え方、家事や育児に対する考え方、そして夫婦や家族という枠組みに対する考え方。すべてが違っていた。
 もちろん僕も、休日には子どもをお風呂に入れたり、おむつの交換もすすんでやった。子どもがお腹を壊したときに交換するおむつの匂いは、いまではいい思い出だ。妻の買い物にも付き合ったし、家庭や子育てを放棄していたわけではなかった。
 それでも、僕の知っている「家庭」とは、あの八女の町にあった堀江家なのだ。
 子どもの授業参観なんか出る必要がないと考え、たった一度の家族旅行で立ち食いそばを食べさせる両親しか知らないのだ。率直に言って、温かい家庭がどういうものなのか、なにをどうすれば一家団らんができるのか、みんなどうやって良きパパ、良きママになるのか、僕はいまだにわからない。
 結局、彼女とは2年ほどで離婚してしまった。これ以上、結婚生活を続けることはできない。このまま関係を続けても、お互い不幸になるだけだ。僕としては、十分に納得した上での結論だった。これで自由になれると、離婚できたことを喜んでさえいた。

 ところが、ここから人生最大の孤独に襲われることになる。
 妻と子どもの出ていった空間の、残酷なまでの広さ。子ども用のおもちゃ、カラフルな飾りつけ、妻の雑貨などがなくなった部屋の、絶望的な静けさ。
 あれほど煩わしく感じていた家庭を失うことが、こんなにも寂しいものなのか。
 ひとりで住むには大きすぎる、殺風景な一軒家。それはまるで、がらんどうになった僕の心を映し出す鏡のようだった。
 寂しさを紛らわすため、友達を呼んで大騒ぎしたり、適当な女の子を連れ込んでセックスしたりしてみても、すぐさま孤独な時間がやってくる。家に帰るのが嫌で、酔いつぶれるまでバーを飲み歩く日々が続いた。しらふのまま家に帰ると、否が応でも「ひとり」を突きつけられるのだ。食事や睡眠は不摂生になり、女性関係もだらしなくなり、自分の弱さにほとほと嫌気が差してくる。

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ゼロ—なにもない自分に小さなイチを足していく

堀江貴文

「誰もがゼロからスタートする。失敗してもゼロに戻るだけで、決してマイナスにはならない。だから一歩を踏み出すことを躊躇せず、前へ進もう」――なぜ堀江貴文さんは、逮捕されてすべてを失っても希望を捨てないのか?  彼の思想のコア部分をつづる...もっと読む

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Singulith 「僕も、休日には子どもをお風呂に入れたり、おむつの交換もすすんでやった。子どもがお腹を壊したときに交換するおむつの匂いは、いまではいい思い出だ。妻の買い物にも付き合ったし、家庭や子育てを放棄していたわけではなかった。」  堀江貴文  https://t.co/1bq6x95woD 約3年前 replyretweetfavorite

Polyhedrondiary ホリエモン。女子と話もできなかった学生時代を乗り越えてできちゃった婚。妻子が去った後は皆で騒いだり女の子連れ込んだりしてみても寂しかったって。だろうなー。 3年以上前 replyretweetfavorite

Tom1115 自分のチームをどう作るかイメージが具体的になった。 3年以上前 replyretweetfavorite

Kanaerror 知れば知るほど、人間的な魅力に溢れた人だなぁ…と思ってしまう。ゼロの発売が待ち遠しいな。 | 3年以上前 replyretweetfavorite