大阪酒日記7 新今宮~京都~梅田~京都~十三~今宮戎

東京で生まれ育ち、数年前に大阪に転居したライターのスズキナオさんが、大阪をはじめとする味わい深く個性豊かな酒場の数々や酒にまつわるエピソードなどを通じて関西の土地や文化と出会う。『深夜高速バスに100回くらい乗ってわかったこと』も話題の”ウェブライターの真打ち”が満を持して「酒と関西」に向き合います! 今回はいろいろとにぎやかな「酒日記」

ある日。

鶴橋の「よあけ食堂」へ取材に行く。今日も年配のカメラマン・Oさんと一緒だ。お店のお母さんが気さくに接してくれて、普通に二人で飲みに来たかのようにリラックスしたムードで取材を進めさせてもらう。

「よあけ食堂」は、鶴橋商店街のそばにあるカウンターだけのお店。お地蔵さんを目印に路地を折れると現れる。朝8時半から営業していて、夜勤明けの人が一杯ひっかけにも寄っていくそうだ。戦後まもなく、この辺りに生まれた闇市の片隅で開店したとのことで、創業から75年近くになる。三代目になるご主人と奥さんが二人でやっていて、常連さんも一見さんも分け隔てなく接してくれる。

名物メニューのイワシ汁をいただく。ダシの味わいの中にちょっと辛みがあって後を引く。おすすめしてもらった通り雑炊にしてみたところ、グッと柔らかな味になって驚いた。うどんを入れる人も多いらしい。壁に貼られたメニューには「宮城さん」「もりしげ焼」「太ちゃん」みたいに内容がまったく想像できない謎のものも多い。これはどれも常連さんの愛称らしく、そのお客さんのリクエストによってできあがったメニューなのだそうだ。「太ちゃん」というのを注文してみたところ、ソーメンと豚キムチを炒め合わせたものに韓国の「プルゴッチ」という青唐辛子を刻んでふりかけて食べるものだという。美味しいけど、めちゃくちゃ辛い。刺さるような辛味。Oさんは辛いのが好きだそうで、「おいしいですわ!」とめちゃくちゃ汗をかきながら食べている。時おり気持ちいい風が通って、なんといい店か。

取材を終え、駅でOさんが最近ハマっているという「ポケモンGO」の画面を見せてくれる。60代も半ばになるというOさんだが、スマホゲームには目がないらしい。「あ、珍しいポケモンいますわ」と、自分にはなんのことだかまったくわからないが、とりあえずOさんが楽しそうなのでホッとした。私との酒取材でいつも迷惑をかけてしまっているOさんだが、今日は終始上機嫌であった。「よあけ食堂」に漂う陽気な雰囲気のおかげかもしれない。それにしても、店で出てくるハイボールがかなり濃いめで、それが効いたのか帰りの電車で熟睡してしまった。

ある日。

夕方に家を出てJR京都駅へ向かう。駅前でTさんと待ち合わせて「いなせや」へ。ちょうど奥の壁際にずっといられるような落ち着く場所が空いていて、そこで閉店間際までずっと飲む。酒もつまみも安くて美味しくて大好きな立ち飲み。

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関西酒場のろのろ日記

スズキナオ

東京で生まれ育ち、数年前に大阪に転居したライターのスズキナオさんが、大阪をはじめとする味わい深く個性豊かな酒場の数々や酒にまつわるエピソードなどを通じて関西の土地や文化と出会う。『深夜高速バスに100回くらい乗ってわかったこと』も話題...もっと読む

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chiruko_t 神戸から西九条徒歩は無理。 25日前 replyretweetfavorite

OygZ9J4qiVbuj6u #スマートニュース 25日前 replyretweetfavorite