ゼロの自分にイチを足す
それでは、自らの「信用」に投資する、とはどういうことだろう?
これが貯金であれば、話は早い。収入の何パーセントを貯金に回そうとか、積立用の口座をつくろうとか、小銭は全部貯金箱に入れようとか、いろんな「こうすればお金が貯まる」の具体例を紹介できる。
しかし、信用となるとそうはいかない。
たとえば、あなたが率先してボランティア活動に参加したり、多額の寄付をしていたとしよう。それについて、「すばらしい人だ」と評価してくれる人もいれば、「信用ならない偽善者だ」と反発する人もいる。ここばかりはどうにもできない。相手がどのように評価し、信用してくれるかどうかは、こちらでコントロールできる問題ではないのだ。特に、なにもないゼロの人間が「わたしを信じてください」と訴えても、なかなか信用してもらえないだろう。
それでも、ひとりだけ確実にあなたのことを信用してくれる相手がいる。
「自分」だ。
そして自分に寄せる強固な信用のことを、「自信」という。
僕自身の話をしよう。学生時代、僕は自分にまったく自信を持てなかった。中学高校では落ちこぼれだったし、女の子にはモテないし、大学に入っても麻雀や競馬に明け暮れる毎日だ。コンプレックスの塊で、自分という人間を信じるべき要素が、どこにも見当たらなかった。
しかし、徐々に自分に自信を持てるようになっていく。
それはひとえに「小さな成功体験」を積み重ねていったおかげである。ヒッチハイクで心の殻を破り、コンピュータ系のアルバイトに没頭する過程で、少しずつ「やるじゃん、オレ!」と自分の価値を実感し、自分のことを好きになっていった。
なにもない「ゼロ」の自分に、小さな「イチ」を積み重ねていったのである。
さて、大切なのはここからだ。
自分に自信を持てるようになると、他者とのコミュニケーションにも変化が出てくる。誰に対してもキョドることなく、堂々と振る舞えるし、多少むずかしい仕事を依頼されても「できます!」と即答できるようになる。ハッタリをかませるようになる。
会社を起ち上げて間もないころ、僕はいつも強気にハッタリをかまし、技術的に可能かどうかわからない案件をガンガン引き受けていた。受注してから書店に走り、専門書を読み込んで対応することもしばしばだった。
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