ドラマの中における「退職届不受理率」
様々なドラマで、スーツの内ポケットから唐突に退職届を出して覚悟を伝え、周囲を動揺させ、でも結果的に、その退職届は受理されることなく、偉い人が「これはこうさせてもらうよ」などと言いながらビリビリに破るシーンを見てきた。ドラマの中における「退職届不受理率」は90%を超えるのではないか。それが、ドラマの中の世界だけで通用することだと知らずに、現実社会で、覚悟を伝えるために退職届を出したら、すぐさま受理されて狼狽しちゃった人って、全国にどれくらいいるのだろう。その人の、その後の人生を知りたい。
すべてがサビのような作り
『半沢直樹』を見終えた。前回シリーズよりも展開も表情も明らかに味付けが濃くなっており、物語の詳細よりもテンションが最優先されていた。どうしても伝えたい言葉があって、その後に曲を作っていくのではなく、あらかじめ超ハイテンションな楽曲が用意されており、そこに合わせる歌詞をひねり出す感じ。ドラマの後半は政界の汚職が中心になったが、それって、この数年、現実の政治の世界でも起きてきたことだから、しっかり批評的に描こうと思えばいくらでもできたはずだが、そうはならない。「ここでもう一回サビを作りたいので、物語を動かしますよ!」という腕力が、随所に感じられた。
展開の素早さ。そして、展開を補足する説明的な芝居(すぐに「◯時間前」「◯日前」と戻る)が連なる。(B’z「LOVE PHANTOM」のように)楽曲のすべてがサビではないかと感じさせる作りになっていた。「悪いことをしているのではないかと疑われる人」と「悪いことをしている人を成敗したい人」がいて、後者が前者の悪事の証拠を掴み続ける。飲み屋やホテルのラウンジでいちいち部下らに報告するので進捗が逐一わかるようになっており、善悪の対立構造がこれでもかと繰り返し強調され、最終的に、謝罪や土下座を要求する。