女として扱われることを受け入れなければ恋愛できないのでしょうか

今回、牧村さんのもとには、「友人からのアドバイスで男性と付き合ってみたら地獄だった」という女性からのおたよりが届きました。「女として扱われるのは喜びで、それを気持ち悪いと思った私が異常なんでしょうか?」と悩む相談者さん。牧村さんはその友人と男性のことを想像しながら、問題の本質を明らかにしていきます。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや

「そういうもんだよ、あきらめちゃいな、いちいち傷ついてないでさあ」

そうやって人に言い聞かせてくる人、自分の傷の痛みを麻痺させる薬を人にも飲ませようとしてるんですよね。傷つけてくるものに抗うことをあきらめて。傷が治らないままで。

毎週水曜朝10時、人生相談の連載「ハッピーエンドに殺されない」。今回は、「自分を“俺の女”扱いしてくる男が気持ち悪くて別れたら周囲から“理解できない、それじゃなくちゃ付き合ってる意味がない”と言われた」というおたよりをいただきました。

「俺の女」で、「私の彼」で。
所有しあいが、お付き合い?

「とりあえず付き合ってみなよ」
「まだわかってないだけだよ」

はい、みなさん男女ペアで愛し合ってくださ~い! って感じの社会。「国家の指定する範囲の年齢及び世帯収入の男女が一対一の排他的セックス関係を国家に誓ったらお金をあげますよ」という政策がマジで敷かれ、そんな今日この頃に生まれた子供たちが成長しているであろう10年後以降には「消費税上げなきゃね」。

正しい国民、正しい性愛。
繁殖、お国を支えましょう~。

っていう感じの繁殖場で、「やらされる」ことなく「やる」ことができるのか……なんて呼ぼうか、その、愛、ってやつを。

今回は、「“俺の女”扱いされることなしに、私は男性と個対個の関係を築きたいんだけどなあ」っていうおたよりを元に、考えていきます。金と労働力を搾り取られ性愛を囲い込まれ「それは社会に貢献できるのか?」を問われ続ける日々にあり、「所有」を「愛」と呼ばされる力に抑え込まれず、やれるのか、愛? って、話を。

では、おたよりの紹介からまいります。

私は女性です。元々、恋愛に興味はありませんでした。自分が女であると強く意識したこともなければ、女らしく振る舞うのもあまり好きではありません。

しかし、ある時知り合った男性から告白をされました。私はその人へなんの感情もありませんでした。友人に相談すると、とりあえず付き合ってみたらいいじゃんと言われ、当時自分がなかった私はそのアドバイス通りに告白を受けました。結果は、地獄でした。

まだ知り合って数回会った段階で付き合ったので、まだお互いのことなど知りません。なのに、相手の人は私のことを好きな女、と言ったり、電車の中で頭を撫でてこようとしたり、ホテルへ連れて行こうとしました。会話も、相手の武勇伝ばかりで私の話は流されてばかりで、お互いの誕生日も好きなものも知らないままでただただベタベタと甘ったるい言葉を言われる日々でした。そんな調子なのに、「君は俺に似ていると思った」と言われ、それも今までの全てがとても気持ち悪く、この人は私が好きなのではなく、自分の中に作った自分が思っている女の私を愛でていて、女であればセックスがしたいんだなと感じました。

友達にもうしんどい、女として扱われるのが辛いと相談したら、そんなもんだよ、それにたかがセックスじゃんと言われ何がなんだかわからなくなってしまいました。

それからすぐ別れ、今度からはちゃんと個人として関われて男女というより友達みたいな関係を築きたいと言ったら、それじゃ付き合ってる意味無くない? 理解できないと友達だけでなく同僚にも言われてしまいました。

そもそもは私が悪いです。興味もないのに付き合って、勝手に傷付いているのだから、相手を見ていないという点ではその付き合ってた男と同じなので、確かに似ていたのかなと思いますが、自己嫌悪と性への嫌悪感でいっぱいです。

性的なアピールや関係がなければ、付き合っている意味ってないのでしょうか?女として扱われるのは喜びで、それを気持ち悪いと思った私が異常なんでしょうか?
(一部改行を加えて全文掲載しました)


登場人物全員傷ついてる話だと思いました。痛み止めにしたかったはずの言葉が、また別の人を傷つけている。

「とりあえず付き合ってみなよたかがセックスじゃん」フレンド。
「君は俺に似ていると思った」ボーイ。

その人たち、一見、何ていうか、「うまくやれてる人たち」に見えると思うんですよ。「あれ、世の中そういうもんなのかな、それをやれないこっちがおかしいのかな?」みたいな。そんで「私が異常なんですか?」って、おたよりをくださったんですよね。

まず最初になんですけど、わたしはあなたに「異常じゃないですよ」とか言わないです。異常とか正常とか、付き合ってる意味がどうこうとか、わたしが口出すことじゃないんだもん。

だからなんだろう、「異常じゃないですよ」とかなんとかわたしが外から言うんじゃなくて、あなたに「自分は異常なのだろうか」と思わせたフレンドとボーイのことを想像したいなって思ったんですよ。

「自分は異常なのだろうか」って悩んでる時、人間「正常なみんなvs異常かもしれない自分」という構図でものを見てしまうからね。ポツンとしちゃってつらいでしょ。

なので、わたしね、正常にうまくやれていそうな感じの人たちの中で立ち尽くしてしまったら、一人一人をようく見てみることにしてるんですよ。「みんな」の群れを見て自分を嘆くのではなく、ひとりひとり「その人」に着目する。「みんなvs自分」構図を意識的に脱し、自分という知覚デバイスで「その人」を知ろうとする。そうすると、「あー、けっこう頑張って正常やってんだなー」ってことがわかったりするから。もともと正常やれてるんじゃなくて。

ともあれこれは文章による相談であり、おたよりに登場する方々に直接会うことはできないので、並んでいる言葉をヒントに想像を巡らすほかないのですが。「その人きっとそういうことよ(ビシッ)」ってやるんじゃなくて、「その人はこうなのかもしれないな~ってこうやって考えられるじゃん」という例として、ちょっと書いていきますね。おたよりに登場する、その人と、その人のことを。

まず、「とりあえず付き合ってみなよたかがセックスじゃん」フレンド。

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

mmmm80080044 牧村さんの連載、Aセク的にも読みて~~~なんだけど連載単位で購入させてくれないかな~ 5日前 replyretweetfavorite

ranko1990 熱い!最高! 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

granat_san 「でも、痛みも含めて生命をやりたいなら、あなたは麻… https://t.co/dn4Lv3YzgM 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

gibbous_leo ▶️ 「とりあえず付き合ってみなよ」 これ私も言わ… https://t.co/VzMv6NsR73 約1ヶ月前 replyretweetfavorite