だるい経費精算、どうしたらラクになるのか

カフェ「しくじり」。一見さんお断りの会員制だ。
ここでの通貨はしくじり。客がしくじり経験談を披露し、それに応じてマスターは飲み物や酒を振る舞う。 マスターは注意欠如・多動症(ADHD)の傾向を持ち、過去に多くのしくじりを重ねてきた。しかしある工夫で乗り越えてきた不思議な経歴の持ち主。会員のために今日もカフェのカウンターに立つ。 そんな奇妙なカフェのお話。
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(カラン、コロン〜♪ カラン、コロン〜♪)

りんだ 「あ~! お金が! ない! あ~!」

小鳥遊 「おや、りんださん、こんにちは。いきなりどうしたんですか?」

りんだ 「小鳥遊(たかなし)さん! わたし、しくじってしまって、今お金がないんです!」

小鳥遊 「まぁまぁ落ち着いてください。ここはしくじりが通貨ですので大丈夫ですよ」

りんだ 「たっぷりしくじり披露するので、なにか食べ物をめぐんでください!」

小鳥遊 「フフフ。では、りんださんのしくじり、じっくり聞かせていただきますね」

****

りんだ 「先月、10か所くらい出張に行ったんです。北海道、東北、四国、九州……もう疲れ切ってしまって。先週までにその交通費を会社に請求しなきゃいけなかったんです。でも、面倒くさくなって」

小鳥遊 「経費精算するのを、ずるずる先送りしてしまったと?」

りんだ 「そうなんです~~!! 全部で10万円以上ですよ! 今わたしの財布にあるはずの万札たちが、ないんです。自分のせいではあるんですけどね……」

小鳥遊 「それは大金ですね」

りんだ こまめに経費精算の申請を出せばいいなんてことは、わかってるんです。でも申請書なんてすぐつくれるし、あとでいいや、まとめてやろうって思っていたら、よくわからない領収書が山盛りになってしまうんです」

小鳥遊 「そうなったら、もうやらないですよね」

りんだ 「はい、そのとおりで……ということで金欠になってしまいました。この間は申請の期限が切れてしまって、3万円分の領収書を泣く泣く破り捨てました。経理部の人に怒られるのが怖くて……

小鳥遊 「いや~、しびれますねぇ(笑)。いつもりんださんはクオリティ高いしくじりを提供してくださる! 何か食べたいものはありますか?」

りんだ 「それが、今猛烈に『のりたまをかけたごはん』と、あと『レトルトのカレー』が食べたいんです」

小鳥遊 「ずいぶんと限定的ですね。承知しました。タイミングよくどちらもあるので、少々おまちくださいね」

****

小鳥遊は、棚からのりたまを取り出すと、手早くごはんの上にかけてりんだに渡し、のりたまが入っていた小袋をゴミ箱に捨てる。

小鳥遊 「まずは、のりたまをかけたごはんです」

りんだ 「ありがとうございます~~! おいしい~!! たまに猛烈に食べたくなるんです」

小鳥遊 「こんなに喜んでいただけるとは。わたし、ほぼ何もしてないですが」

りんだ 「小鳥遊さん、次! カレー! ほら!」

小鳥遊 「あ、はい、少々お待ちくださいませ。いきなり元気になりましたね」

小鳥遊はレトルトのカレーを棚から取り出して、レンジであたためる。

りんだ 「あと、そこのパック入りの杏仁豆腐もおいしそう! あっ、そこにあるのは堂島ロールケーキ! それも食べたいなぁ! ねぇ、小鳥遊さんいいですよね?」

小鳥遊 「わたしがあとで食べようと思っていたのですが、見つかってしまいましたね。はい、お出しします」

小鳥遊は名残惜しそうに、杏仁豆腐やロールケーキをカフェの皿に移しかえてりんだに渡す。

りんだ 「うわ~! 全部おいしいです! さすが小鳥遊さん!」

小鳥遊 「わたしはひとつも作っていませんがね……」

小鳥遊は、レトルトのパウチや杏仁豆腐が入っていた容器、ロールケーキが入っていた箱を片付けながら、少しぼやく。

りんだ 「あはっ! 見つけちゃいましたよ小鳥遊さん! そこにあるのは、銀座千疋屋の高級ジュースですね~! 欲しいなぁ~! 欲っしいなぁ! わたし、しくじりましたよっ」

小鳥遊 「……しまった、これは奥に隠しておくべきでした。でも、しょうがないですね。どうぞお召し上がりください。瓶のままでは芸がないので、グラスに入れてお出ししますね」

りんだ 「ありがとうございます~~!」

小鳥遊 「ああ、わたしの閉店後の楽しみが……」

****

ひとしきり食べ終えて落ち着いたりんだが口を開く。

りんだ 「そういえば、あれだけ矢継ぎ早にお願いして、すぐに出してくださったのに、目の前はとてもキレイですね」

小鳥遊 「いいところに気が付きましたね。今日お伝えしたかったことは、まさにそこなんです」

りんだ 「え? 『台所はキレイに』ですか?」

小鳥遊 「いえいえ、ちがいます。キャッチフレーズ的に言えば、『小さい仕事は大きい仕事に付け足そう』です

りんだ 「小さい仕事? 大きい仕事?」

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カフェ「しくじり」へようこそ

小鳥遊 /りんだ

発達障害でありながら一般企業に勤める小鳥遊(たかなし)さんが、カフェのマスターに扮して仕事の悩みに答えるストーリー連載。「安心して仕事ができるようになる、安心して会社に行けるようになる」を目指す、世界でいちばん意識低い系のビジネス連載です!

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コメント

sayako_sz 大学後輩の連載。ものすごーくためになります!! 21日前 replyretweetfavorite

madozukin おもしろかった!また読みたい!> 24日前 replyretweetfavorite

restart20141201 ゛『小さい仕事は大きい仕事に付け足そう』゛ |小鳥遊 @nasiken /りんだ @shabelinda31 |カフェ「しくじり」へようこそ https://t.co/Goc4y7ZjbY 24日前 replyretweetfavorite

juni_ca_wa_ii 個人事業の方の経費は毎日。会社の経費も発… https://t.co/p4ZsCx4cNi 24日前 replyretweetfavorite