人生二度目のマタニティライフを送っております、下田美咲です。
さて、この記事を書いている現在、まだまだ安定期にすら入っておらず、心身ともにとても不安定な毎日を送っていて、その影響で、 cakesの連載も不定期更新となっておりますが、せっかくなので今日は、妊娠生活の実態(とはいえ、それは妊婦の数だけあるし、さらにいえば妊娠の数だけあるとも言えるので、あくまで下田美咲の場合のソレです)を良くも悪くも伝えたいと思います。
「ああ、もう、二度と妊娠したくない!!!」
まず、二度目なんですが、一度目と同じく思っていることが「ああ、もう、二度と妊娠したくない!!!」です。これは本当に四六時中思うし、残りの期間を数えては途方に暮れるのも日課です。現在、あと188日残っています。そう思うと「マジかよ(ドン引き)」と何度でも思うほどには、妊娠している体って、辛いです。
結局それでもまた妊娠しているから説得力に欠けてしまうと思うけど、前回の出産から3年が経って、だいぶ記憶が薄れてきたからこそ踏み切れたような部分がかなりあります。3年って、心の傷を、けっこうかなり癒すんですよね。人って3年以内には、大概の大失恋からも立ち直りますよね。
第一子と第二子の間が3歳くらい開いている家庭って多いような気がするのですが、最低でも3年くらいは経たないと、妊娠生活のしんどさが忘れられなくて「とてもじゃないけど妊娠する気になれない!!!」という女性が少なくないことが背景にあるからこその年の差なんじゃないかと感じていたりします。ただ、実際に妊娠出産を経験すると、高齢出産のリスクの実態に詳しくなったりもするから、その恐怖に押されて、第二子以降は逆にできる限り間を詰めて産む方向で励むパターンもありそうですが。
私は無痛分娩派なのですが、それでも出産は毎回怖いし、実際になかなかの痛みを伴うし(そもそも無痛分娩の麻酔がめちゃくちゃ痛い)、しかも産後のセックスなんて処女喪失の時よりもよっぽど大変だしで(麻酔が使えない分、個人的には「産むよりも痛い!!!」と思った)、「お腹の外で子どもを育てるのは大好きだけど、お腹の中で育てるのは苦痛しかないし、産むのはもう2度とイヤ!!!」と妊娠中と産後の数年間は常に思っています。
妊娠すればするほど、次回の妊娠が怖くなる。そのくらいにマタニティライフは辛い、と私は思っています。
だけど、そんな大嫌いで超苦手な妊娠生活にも「でも、メリットはある」と感じていたりします。
特殊な体調になるからこその気付き
超——しんどいけど、でも、ルフィが大きな戦いに勝った時くらいの成長は遂げられるような貴重な体験ができるのもまた妊娠生活だ、と思う部分がないわけでもないのです。
妊娠って、本当に、すごく特殊な体調になるからこその気付きが山ほどあるんですよ。
たとえば、味覚。妊娠中って味覚がものすごくコロコロと変わるから、「ああ、今日は何を食べてもまずい!!!」みたいなことが少なくなくて、それって地味にめちゃくちゃストレスになるんです。
母国のレストランに行ってメニューを開いて「この中から、自分は何を食べれば美味しいと感じられるのか全く分からない」って、大人になると普段はまずありえないと思うのですが、妊娠中はそれが常。
アレを頼んでは外れ、コレを頼んではまた外れ、何を食べてもまずいから疲れちゃって、とりあえず人が食べていたものを一口もらってみたら、まさかのそっちが大当たりで「え、今の私って、これがツボなの……!?」と驚く、みたいなことが日常茶飯事。
私は、母がお肉を食べられない人で、弟はシーフードがダメな人で、普段は2人の気持ちや感覚が全く理解できなくて「こんなに美味しいのに何がダメなの?まずい要素ないのに、不思議すぎる」としか思わずに生きてきたのですが、今回の妊娠中は、ある時期はほとんどのお肉がイヤになり、とくに母が苦手としているラインナップがまさにダメになって(母はお肉の中でも、牛や豚のカタマリ肉を苦手としていて、挽肉や鶏肉は平気な場合がある)「ああ、なるほど、こういう意味で苦手だったんだ……!きっと母は普段から、お肉に対してこのニオイを感じていて、それがキツいんだな」と理解しました。
また、エビやホタテに「うっ!」となった時は、30年間よく分からずにいた「あの時やあの時の弟の気持ち」が手に取るように分かったような気がしました。「なるほど!!こういう意味で苦手なのか!!!」と。
理解できることの幅が広がった
また、姉は車酔いが酷い人で、車に乗る時はいつもチュッパチャップスを舐めていたのですが、妊娠したら車酔いがひどくなり、そしたらふとチュッパチャップスが舐めたくなり、20年ぶりくらいに買って舐めてみたら車酔いが癒えまくって「ああ、姉はこの現象を求めて、あんなにもチュッパチャップスを舐めていたのか!!」と、そこもまた今さらに理解できるようになりました。
食べ物の好き嫌いもそうだし、ありとあらゆる身体の感覚って言語化ができないものだから、言葉を尽くしても分かり合えないことばかりで、説明してもらっても分かってあげられないことばかりなのですが、妊娠中に、こんな風にいつもの自分とはまるで違う体質や体調となり、もはや別の生き物みたいになった時に、そのことが他人の理解につながる瞬間があって、その瞬間が私は少し好きです。
不具合が出ること自体は苦痛だけど、新しい症状に襲われる度に、私の中には、今までは言ってることがよく分からなかった他人の顔が浮かんできます。
肉が嫌いな母、エビが無理な弟、車酔いが酷い姉はその一例で、寒がりな人、ニオイに敏感な人、食べ物の好き嫌いが多い人、偏食な人、頻尿な人、痔の人、貧血の人、オナラがやたらと出ちゃう人、辛い食べ物が好きな人、カレーばかり食べる人、魚介豚骨ラーメンが好きな人、果物が好きな人、乳首を触られるのが嫌な人、性欲がない人、やたら眠る人、ぜんぜん眠れない人etc …
様々な体質や体調を抱えた色んな人の気持ちが「ああ、たぶん、こういう感じなんだろうな」と想像できるようになっていて、理解できることの幅が着実に広がっている実感があります。
それって、人に対する優しさになると思うんですよね。他人について理解できる幅が広がることは、思いやれる範囲が広がることに繋がるだろうし、察せることも増えるだろうから。
もし偏食な子どもを育てることになったとしても
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