東田直樹
挨拶ができない僕の中で起きていること
重度の自閉症を抱えながらも、社会を鋭く見つめている作家・東田直樹さんのコラムです。
今回のテーマは「挨拶」です。
「挨拶は人間関係の基本だ」と、私たちの社会では言われています。しかし、「挨拶」は自閉症者にとって、非常に難しいことのひとつだと、よく言われます。「挨拶」の難しさを一概にいうことはできないかもしれませんが、東田さんは、どう捉えているのでしょうか。
僕は、上手に挨拶できません。言葉をうまく話せないためです。
知っている人でさえ、挨拶できないことがあります。挨拶が僕にとって、とても難しいコミュニケーションだからだと思います。
人を見かけたら「こんにちは」という言葉を言うだけのどこが難しいのか、みんなは不思議に感じるでしょう。
僕には、人が見えていないのです。
人も風景の一部となって、僕の目に飛び込んでくるからです。
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この連載について
東田直樹
「僕は、まるで壊れたロボットの中にいて、操縦に困っている人のようなのです。」
会話ができないもどかしさや意に沿わない行動をする身体を抱え、だからこそ、一語一語を大切につづってきた重度自閉症の作家・東田直樹。 小学生の頃から絵本...もっと読む