※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや
毎週水曜朝10時、「ハッピーエンドに殺されない」。読者の皆様からのお便りを受け、誰かが決めた正しい幸せの形に自分を押し込めることなく好き勝手してぇよなという気持ちで考えていく連載です。
今回のお便りはとっても短い。
好きな子と性的なことしたいけど、する度に自分の女という性別を実感してしまい、それが何故か辛くなります。
わああああ!!!!!
まじでそれ。それ結構男の人も感じてることなんじゃないかなと思う。わからんけど。どうですか? 「性的なことをすると自分の性別を実感して辛い」、これ「めっちゃわかる」ってなる人もいれば「何言ってんの? それこそが醍醐味じゃん」ってなる人もいると思うんですよ。誰かとする場合に限らず、ソロプレイであっても。
「性的なことをして自分の性別を実感する」、それこそが醍醐味じゃんってなってる人はもう心ゆくまで実感すればいいことだと思いますが、それが辛いって場合は、なんとかしたいですよね。
お便りくださった方は、「辛い」じゃなくて「何故か辛い」とおっしゃる。じゃあ何なんだ、ということを、今回は考えていきたいと思います。「わからん」ってなってる方とも、「相手がそうかも知れん」という可能性を踏まえ、ぜひ一緒に考えていきたいです。
さて。
性的なことをして自分の性別を実感することの何が辛いのか。人それぞれでしょうからすべてをここで挙げることはできませんが、まずは思いつく限り書き出してみたいと思います。
あー向き合いたくない。でもまぁこれは目を逸らしてもそこにあり続けてしまうので。あえて直視します。このへんじゃないでしょうかね。
・本当はもっと融け合いたいのに、なんか役割から出られてない。女性(であることを期待される人)は受動と受容、男性(であることを期待される人)は先導と能動、とか。ふたり融け合えなくて、寄り添う異物のままでさみしい。
・もしくは性別関係なく、もともとの人間関係の時点で既に優劣というか上下があって、その力関係を再確認するような形での性行為になってしまっており、その「改めて知らしめられる感じ」がダルい。セックスが説教になっている。発注元大企業と発注先弱小工場でお互いに立場を意識しながら接待ゴルフをプレイしているみたいな状態? マジ社会。パワハラックス。
・単刀直入に言ってクリ派。男のものとされる体であれば、生理学的に陰核がめっちゃ伸びたものであると言える陰茎を使って気持ちよくなることができるのに、女のものとされる体だと中イキ至上主義というか、陰核より膣でオーガスムを感じられるようにならないといけないみたいな圧があるので、その圧に押さえつけられている間は本当に気持ちいい陰核への刺激が物足りないまま「膣で感じなきゃ」って自分に強いてしまう。つまらないままで受け入れることを強制されてしまうし、膣がそんなに気持ち良くないのも「まだ開発されてないからだよ」みたいに女のせいにされがち。女、自分責めがち。自分を責めずにクリ攻めたほうがいい。
・なんていうかポルノとして消費されている気持ちになってしまう。義務感であはんうふん言っている。義務感でオラオラ言っている。義務感であはんうふんのオラオラの言っている自分を冷静に客観視してしまう。絶賛上映中。
・そもそも自分の体や声を好きじゃない。
・性行為の相手に対して、「自分が男だったらもっと喜んでもらえたのではないか」「自分が女だったらもっと喜んでもらえたのではないか」「自分が自分なんかじゃなかったらもっと喜んでもらえたのではないか」という感じを抱いている。というか根本的に、「自分が自分なんかじゃなかったら」という感じを抱きながら日々を生きている。
・相手が、あなたを「あなた」ではなく、「女」もしくは「男」という代替可能な存在として扱ってくるやつである。もしくは、過去にそのように扱われた経験があり、それがいまだに自分を苦しめている。
だーっと列挙してみました。何か近いやつありそうでしたかね。けっこう、向き合いたくない何かが出てきちゃいそうな感じがある。おれはつらい。
つらいのであるが、向き合いたくない何かも含めてフルオープンの真っ裸になってこそはじめて得られる快感、開放感もあるわけです。それにはそもそも安心できる相手との関係性、安心できる自分自身との関係性が大前提になる。良いとか悪いとかじゃなくて、そのようにあるんだねーという、存在そのものの重みをただ感じる感じ、無意味に広い宇宙のさなかで無意味にただただ存在してるぜって感じを得たい。これは希望。
え、めっちゃ希望。じゃあどうすればいいんだ、って話を、続けてしていきます。ふたつ続けて、順番に。
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