職業で見えてくる付き合いの本質

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回は、異性と濃密に接する機会が多い職業の人との交際について考えていきます。相手の職業ゆえに不安を抱えてしまいがちですが、森さんが考える、本当に目を向けるべきこととは?

付き合う相手の職業で、自分のメンタルがやられてしまう場合がある。

どんな職業かというと、女性側から言えば、ホストとか風俗業、それに準ずる接客業などだろう。男性側からしても、似たようなものかもしれない。あくまで一般論にすぎないが、異性と濃密に接する機会が多い職種とでもいおうか。

魅力的な人に出会えば好奇心や性欲が沸き上がるのは当然だし、接客のプロはやはりモテると思う。付き合っている身としては心配でたまらない。勿論、モテるからといって無差別に手を出しているわけではないし、公私をわきまえている人が大半だ。

女性と濃密に接する職業の人と付き合ったときのこと

しかし、そういった職業の男性が元はお客様だった女性を彼女にしたとしたらどうだろう。実は私にも経験があって(女友だちの彼を奪うとき)、患者というかクライアントだったのに誘われ、付き合いに発展した。

エッセイは一例で、白状すると今まで何度かあった。どれもこれも私から誘ったわけではない。私があまりにもぼんやりしていて隙があるからつけこまれた、あるいは同情された、等々、そんな意味合いだろう。恋人同士になってから虐げられたとか浮気されたとかはなかったし(たぶん)、どれもこれもわりと長く続いた。一見問題なさそうだが、心中はいつも穏やかではなかった。

女友だちの彼を奪うとき』でいえば、元彼女も彼の元患者というかクライアントだった。ということは、私も同じことをされるのは目に見えている。ちなみにこの一件の前半、私は彼の二番手だった。つまり彼は二股をかけていて、のちに彼は元彼女と別れた。晴れて一番手というかオンリーワンに昇格した私だったが、手放しでよろこべるはずもなかった。一番手がいなくなって急につまらなくなったのも事実だが、これはもう因果応報だよね、と肝に銘じたからである。

諸悪の根源は男だろ、という意見もあるだろう。が、よりつく女性も同レベルだ。だから、そういう男性と付き合うには覚悟がいるし、向き不向きがある。毎日違う女性と濃密に接する職業をしていて、一緒にいてもしょっちゅう太客だかお得意様から電話やメールやLINEがきて、目の前にいる自分よりも太客だかお得意様を大切にしている(ように見える)男性が彼だったとして、はたして我慢ができるのか。

夜や真夜中、日中でも、違う女性に会いに行く(会わねばならない)彼を彼女である自分は笑顔で送り出せるのか。しかも太客だかお得様の愚痴まで聞かされなければならないし、笑顔で的確なアドバイスをしなければならない。本当はこんなに物分かりのいい女じゃないんだけど! と鼻息を荒くしたいのをこらえて、女慣れしている彼のためにセックスの技術も磨かなければならないし、スタイルにも気を配らねばならない。

不特定多数の女性達に慕われている彼の彼女になれてうれしい、と感激した瞬間、そのうれしさと同等の不安が生まれる。さらに、もしかしたら私も彼の元カノに愚痴られていた存在かもしれない、と疑心暗鬼になってしまう。

そんな状態に耐えられる人とは

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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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