「今日家に来れない?久しぶりにヤりたい。」
たったそれだけ。
数ヵ月ぶりの連絡にしては、気遣いの欠片もない言葉。
どう考えても、誰でもいいことを隠しもしない誘い文。
私に会いたいわけではない。ただ挿入できる穴がほしいだけだ。
処女をこじらせたまま大学生活を過ごし、色々あり鬱病にもなった。
やっと出来た恋人とつかの間の幸せを夢見るも、結局全てはいつか終わるもの。
独り身に戻った時には、私の心にぽっかりと空いた穴と、どう向かい合えば良いのかわからなくなっていた。
彼は、私が初めて、出会ってすぐセックスした男の子だ。
終電も過ぎた飲み屋で、外国人にしつこく迫られていた所を助けてくれたのだ。
彼はクラス内カーストの上位に当たり前のようにいたんだろうなという印象だった。
運動部で、人望もあり、成績もよく、おそらくモテてきたんだろう、そこそこ有名な大学を出て、そこそこ良い会社に入って、仕事はとてもやりがいがあると笑っていた。順風満帆に見えた。
同い年だけど、私とは正反対の人生を送ってきているように見えて、羨ましかった。
彼とは2回会ってセックスしたけれど、当時の私は都合の良い女の振る舞い方というものを知らず、面倒がられて、彼とはすぐに連絡がとれなくなった。
私は彼への気持ちを消すために、彼のSNSを全てのアカウントからブロックした。
LINEは踏ん切りがつかずブロックしたり解除したり。最後は解除していたらしい。
それすら忘れるくらいには、ずいぶん遠い話になっていた。
そのあと、ずいぶんたくさんの男の人とセックスするはめになっていたから。
私は無視しなくてはならないと思った。
男に良いように使われている自分に嫌気がさしていた頃だったから。
これ以上不幸に自分を浸らせないように、無視してブロックしなければ。
でも、結局、夕方になって、
「会おうかな、」
と返信している私がいた。
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