「全社プロジェクトなのに、しかもあれだけ明確な方針を示して丁寧に説明したのに、なんで誰も動いてくれないのだろう?」
25歳の私は、机の上で頭を抱えていた。
1980年後半。私が勤務するIBMは、世界中で1000以上の製品を開発していた。一方で日本語対応など、各国独自の要望も急増していた。
そこで年2回の事業計画に合わせて、全IBM製品に対して各国の要望を取りまとめる全社プロジェクトが始まった。私はアジア地域担当として仕組みを作り、動かすことになった。マネジメントと話し合い、方針と目的を決め、業務プロセスを作り、必要なアジア地域の各製品マネージャーを任命してもらい、役割を明確に決めた。作業スケジュールを決め、メンバーを集めて説明会を実施し、理解を徹底した。
しかし、お願いしたスケジュール通りに動いてくれたのはごく一部の人だけだった。8割以上の大多数は動かない。期限が過ぎてから個別に電話をしても、誰もが「何だっけ? あ、あの件ね。まだやっていないんだ。いつまでだっけ?」という答え。
若かった私は無力感に襲われた。しかし悲観的になったり怒ったりしても、何ひとつ変わらない。そこで私は、彼らが動こうとしない理由を探ってみることにした。
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