定食屋、大人の流儀
定食屋の全体としてはDグループ(『定食屋解剖・前編』参照)、「親子継承、地域密着。地元愛され系」多い。私が好んで惹きつけられる店は親の代からあり、家賃がかからない分、こちらが心配になるくらい価格をぎりぎりまで安くしている。
たとえば『食堂筑波』のナポリタンは500円だし、創業60年、吉祥寺の『まるけん食堂』の絶品、茄子炒めは210円だった。
だからこそ、尊い絶滅危惧種を守るための正しい流儀が、客には必要だ。
店主が何気なく漏らしたつぶやきや常連客の助言を元に、定食屋を楽しむ大人の流儀をご紹介する。
1、食べるスピードを他の客に合わせる
常連客っぽい人がわかれば、なおいい。その人の食べるスピードを、なんとなく意識しよう。薄利多売の定食屋は少しでも早めに退店するのが親切だ。とはいえ、初めて訪れる店がどの程度混むのか、時間帯によってどう変わるかは、わからないもの。また、迷惑でなさそうならゆっくり食べるにこしたことはない。せっかくの食事を焦ることはないのだ。
私は慣れた様子で注文をする客を観察し、参考にしている。
2、食べ終わったあと、スマホを見るな、皿を重ねろ
食後にスマホをチェックをしたり、同行の人とおしゃべりに興じたり、長居はもってのほかだ。だいたい、定食屋にドリップコーヒーや洒落たデザートなどない。手が回らないのと、客の回転を良くするためである。
安くておいしい幸福な聖地は、1分でも早く次の人に明け渡してあげよう。そして、片付けやすいよう、同じ型の皿は重ねておこう。
どうしても、食べる前に記録やSMS用に撮りたいなら1枚に。私は、宣伝やPCさえなさそうな店は、僭越ながら告知の一助になればと1枚だけは撮る。
3、ごはんの量を先に聞く
定食屋のごはんはだいたい多い。『あだち』は寿司桶のような器に1升。「少なめに」で5合だった。女性や少食の人は、オーダーの前にごはんの量を聞こう。
数字でイメージがわかなければ、茶碗を見せらもらうのがよい。「小盛り」でも、店や器によって全く違う。利益の薄い商いで、残すのはとりわけ失礼だ。
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