大阪酒日記4 大正~南田辺~京橋~新神戸~我孫子~京都

東京で生まれ育ち、数年前に大阪に転居したライターのスズキナオさんが、大阪をはじめとする味わい深く個性豊かな酒場の数々や酒にまつわるエピソードなどを通じて関西の土地や文化と出会う。『深夜高速バスに100回くらい乗ってわかったこと』も話題の”ウェブライターの真打ち”が満を持して「酒と関西」に向き合います! 今回は酒日記にの第4弾、おなじみのマンガ家R先生と飲み歩く日々。(毎週水曜・土曜更新)

ある日。

R先生がシカクの展示イベントの搬出作業に来てくれることになっており、その後に飲みに行く約束。夕方、R先生とその飲み仲間のHさんとともにシカクを出て外へ。「今日の店選びはナオさんにおまかせします」と言われ、嬉しいけど緊張する。責任重大である。梅田まで歩きながらなんとなく「大正がいいんじゃないか」と思う。大阪駅から環状線に乗って大正駅で下車。

 まず「クラスノ」に向かう。混んでいることも多い店だから入れなかったらどうしよう……と思いつつ行ってみると、ちょうど3人座れる席があいているではないか。ツイてる。R先生が「飲み会が始まるぞ!っていうこの瞬間の楽しさ、これこそ私がマンガで一番伝えたいことなんですよ!」と、美味しそうに一杯目のビールを飲んでいるので、自分も嬉しい。しかし「クラスノ」、いつ来てもつくづくいい店だな。

 この一見不思議な店名は「クラスノヤルスク」というシベリアの地名から取ったもので、創業者がシベリアに抑留されていた経験を忘れまいと名付けたものだという。その創業者について、店の若き三代目が話しているのが聞こえてきた。それによれば創業者は今101歳で、介護施設にいるそう。施設内で企画された習字の時間に「だし巻き」と書いたという。だし巻きは「クラスノ」の名物料理なのだ。焼き物は二代目が、だし巻きだけは三代目が担当するのがルールだという。店内には三代目の小さなお子さんや、先代の奥さん(こちらも100歳近いご年齢だとか)が入れ替わり現れたりして、家族の歴史が凝縮されたような感じがこの店の魅力だと思う。

 店を出た後、仕事帰りのHさん、Yさん夫妻も加わって賑やかに。裏路地にある気さくな雰囲気の大衆酒場「畑分店」に入ることにする。ここは店内も広くて、人数が多い時にちょうどいい。しばし歓談。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

本連載がもうすぐ本になります!

この連載について

初回を読む
関西酒場のろのろ日記

スズキナオ

東京で生まれ育ち、数年前に大阪に転居したライターのスズキナオさんが、大阪をはじめとする味わい深く個性豊かな酒場の数々や酒にまつわるエピソードなどを通じて関西の土地や文化と出会う。『深夜高速バスに100回くらい乗ってわかったこと』も話題...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません