西九条周辺「玉や」「金生」―大阪で生きていることを実感させてくれた酒

東京で生まれ育ち、数年前に大阪に転居したライターのスズキナオさんが、大阪をはじめとする味わい深く個性豊かな酒場の数々や酒にまつわるエピソードなどを通じて関西の土地や文化と出会う――”ウェブライターの真打ち”が「酒と関西」に向き合います!今回はミニコミショップ「シカク」にまつわる酒場の話。

ミニコミ専門店「シカク」のこと

 当連載でもたびたび名前を出しているミニコミ専門書店「シカク」について、今一度しっかり書いておきたいと思う。

 私が大阪に引っ越してきた当初、店番の仕事を与えてくれたのがその書店であったことは前に書いた。大手出版社が作っている本ではなく、ミニコミ、ZINE、同人誌など様々な名で呼ばれる“個人出版物”を中心に取り扱う「シカク」がオープンしたのは2011年。当時は大阪市北区の中津商店街に店舗があった。スマートフォンのナビを頼りに最初にお店を目指した時の心細い気持ちを今でも思い出す。細長い中津商店街には天幕が張られていて日中でも薄暗く、駄菓子屋、酒屋、化粧品店など、昔ながらの商店がかろうじていくつか店を開けているだけで、あとはシャッターが降りている。



人通りもほぼなく、静まりかえった商店街の中ほどにぽつんと怪しげな外観の店があり、それが目的の「シカク」だとはわかっても、そのドアを開けるのにはかなり勇気が必要だった。

 思い切って開けてみればみたで、それほど広くない店内に並んでいる本はパッと見には内容がよくわからないものばかりだったし、奥の小上がりに座っている店長と副店長のいぶかしげな視線をなんとなく感じるし、緊張で背中にじわっと汗がにじんでくる。

 しかし、自分から入っておきながら逃げ出すようにすぐに飛び出したその店で、数か月後に店番をしているのだから不思議なものである。

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関西酒場のろのろ日記

スズキナオ

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chimidoro 「シカク」との長いつきあいの話と 約2ヶ月前 replyretweetfavorite