バブル崩壊を茶化しまくる“庶民代表”たる両津

現代の「浮世絵」たる『こちら葛飾区亀有公園前派出所』には、「庶民の金回り」の“リアル”がにじみ出ています。前回に引き続き、大衆社会の「お金」の変遷を紐解きます。第2回は「バブル崩壊」。多くの大衆にとって「バブル」とは、それほど「うまみ」を味わえるものでもなかった! 9月12日発売の『『こち亀』社会論 超一級の文化史料を読み解く』(稲田豊史)から特別集中連載(毎週水・土曜日更新予定)。

39億円のマンションはなぜ売れるのか

 1991年に入ると、天井知らずと言われた不動産価格も下落し始める。しかし10億円以上するような超高級マンションの施工は止まらず、人気は続いていた。

『こち亀』はこの状況について、91年28号「豪華マンションの甘い罠!の巻」(75巻)で見事な解説を施している。

 両津宛てのダイレクトメールで物件価格が19億〜39億円台という超高額マンションの案内が届く。マンション名は「メゾンZ麻布」。地価トップクラスの港区麻布だ。「一番安いマンションが19億だぞ! どこがマンションの値段の下落なんだよ!」と言う両津(ここでは、「マンション価格が下落している」ことがあたかも世の常識のように語られている点がポイント。小中学生がそれを把握していたかは疑問だが)。そこに富裕層事情に詳しい中川が答える。


中川「下落したと言われるのは一般のマンションですよ。つまり5000万円を中心とした1億以下の物件です/都心の一等地の価格は驚異的に上がりましたからね/土地代だけで何10 億ですから、一等地のマンションは一般向きには売りにくいですよ/だから建築技術や防犯設備、ぜいたくな材料を使った技術の集大成のマンションを作るわけです/広さも普通のマンションの5倍以上ありますからね」
(略)
両津「しかし39億なんてマンションが売れるのかよ!?」
中川「さっき言ったように一般向きではないですから、会社などが法人として購入する例が多いと思いますよ/個人でなく会社が買うから税制的にメリットもあるし、このまま好景気が続けば……/首都の一等地で資産価値も高いし…/また日本に進出してくる海外企業や、麻布では大使館が多いので、その関係などで…/需要はかなりあるはずだから…/その価格を払ってでも東京に住む価値があると判断すれば、マンションは売れます!」


 この回で両津の同僚警官である寺井は、「以前にローンを組んで2500万円で買ったマンションが2800万円で売れる」という趣旨の話をしているが、次の回(91年29号「スーパーバイザー両さんの巻」75巻)では、両津から「常に値がピークの時に家を買っている」と手痛く指摘されている。ここでは時代の波がサーフィンの波にたとえて図示されており、昭和47〜49年(1972〜74年)と昭和61〜63年(1986〜88年)が「土地ブーム」のピークだったと描かれた。

 1991年半ば、もはや「バブル」は振り返りモードに入っているのだ。なお、地価が公示価格ベースで明確に下がったのは1992年3月のこと。実に17年ぶりの下落だった。

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こち亀』社会論 超一級の文化史料を読み解く

稲田豊史

昭和~平成にかけて「週刊少年ジャンプ」で読まれ続けてきた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。連載40年、全200巻という偉業を果たした国民的漫画は、大衆社会を活写し続けたまさに「浮世絵」です。「こち亀と日本社会の40年」を紐解いた『『こ...もっと読む

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keykkoku 昭和を知りたければ、こち亀と島耕作を読め! 18日前 replyretweetfavorite