生まれつきじゃない同性愛は偽物なのですか?

今回、牧村さんのもとには「私は虐待を受けて育ちました」という方からのお悩みが届きました。異性愛に対するトラウマを植え付けられて同性を好きになったものの、「生まれつきは本物、後天性は偽物」という発言を目にして傷ついている投稿者さん。牧村さんは、自身の苦悩を織り交ぜながら力強い言葉を投げかけます。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや

毎週水曜朝10時、「ハッピーエンドに殺されない」。これこそが正解ですよって提示されたものに自分を無理やり当てはめて、善意の民の「ハッピーエンドだね!」っていうニコニコに囲まれて死ぬ人生マジでバッドエンドじゃんって思うので何とかしようと考える連載です。

現在、2020年。

「みなさん、知っていますか? 人口の○%はLGBTです。それは生まれつきで変えられないものなのですよ。あたらしい家族の形、マイノリティでも頑張って自分らしく生きている。企業もダイバーシティで強くなる。だから差別しないで、理解してあげましょうね!」

みてえな説がめっちゃ広められた2015年から5年ほどが経ちました。

そのおかげで良くなったこともあるでしょうが、逆に息苦しくなったこともあると思います。

「衝撃!実はLGBTな芸能人」
今までの差別語がただただ「LGBT」という言葉に置き換えられていく。

「LGBTの流行りに乗ってるだけの偽物」
ブームみたいなものだとされる。

「あなたはどっち?LGBT診断!」
人間がLGBTとそうでない人とに二分され、“どっち側”なのか判断され、ヒヨコ鑑定士の性別鑑定作業みたいに、二つの箱に分けて放り込まれてってしまう、おれたち。

ピィッ!!!!!!!!🐥🐥

むかつくぜ。箱を出たいと思います。 今回ご紹介するのは、「虐待により男性や異性愛に対するトラウマを植え付けられた。女性を好きになったが、親に紹介されたスピリチュアルカウンセラーから“本来の役目は異性を愛することなのに、魂を磨かずに同性と付き合う者がいる”などと言われた。LGBT当事者にも“生まれつきでないなら偽物”などと言われた」という、おたよりです。「全員黙れ」の四文字で済ませてえくらい腹が立ちますが、それはそれで“悪魔に憑かれている!😠”とか“もっと上品に丁寧に言わないとマイノリティ全体の印象が悪くなるでしょ?😠”とか言われるんですかね? あはは。

考えていきましょう。これは……信じる、ということについての話です。早速、おたよりを読んでいきましょう。

私は虐待を受けて育ちました。男性嫌悪や異性愛嫌悪を植え付けられるような、辛い扱いを受けてきました。

中学の時、初めて同性を好きになりました。

けれどしばらくして、親から紹介されたスピリチュアルカウンセラーにこんなことを言われました。

・魂は生まれた時から決まっていて変わらない
・好きになる対象も生まれる以前に決まっていて変わらない
・中には、異性を愛するという本来の役目を果たさず、魂を磨かずに同性と付き合う者がいる

そして、私の好きな子への想いは、「ああなりたい」という憧れだと。

そう伝えられて酷く動揺して絶望しました。 好きな子への想いや、自分のあり方を否定され、自分で自分がわからなくなりました。

その頃はLGBTQという言葉が浸透してきていました。 ネットで「生まれつきは本物、後天性は偽物」とおっしゃっていたLGBTQ当事者の方もいました。

私は自分の中に、生まれつきである印の様な物を必死に探しました。自分の存在を認める様な文章を探しました。

こんな事を言うのは相手の悩みを見下していると思われてしまうかもしれませんが、正直、「同性を愛する自分に悩んでいる方が羨ましい」と思いました。自分のセクシャリティ(又はジェンダー)をわかっていて、トラウマなどの過去もなく、何故そうなったかと原因を当てはめなくて済む、そんな人達が。

この性自認がもしもトラウマから来ていたとして、それは偽物で、悪いことなのでしょうか?

(全文拝読の上、編集して掲載しました)


ええ、偽物なんでしょうね。悪いことなんでしょうね……

そいつらの中ではな。

何かを信じることはかまわない。けど、何かを信じるために何かを否定するやつらのことは、「自信がないんだな」って思いますね。それこそ、文字通りに。

めっちゃいっぱいいますよね、「私LGBT当事者だけど○○は偽物」みたいなこという人。それは単に「わたしは本物」って言う自信がないやつのやることだとわたしは思ってますよ。スピリチュアルの中でも精神性が低いようなやつとか、“みんな馬鹿だけど自分は全てを知っている”みたいな顔した陰謀論者とかも、「LGBTって実は○○のせいなんです」みたいなこと言いたがるよね。そいつらの両方にもらい事故しちゃったようで、マジでお見舞い申し上げます。そいつらの危険運転がなぜ行われているのかということを考えていきたい。

これね、信仰の話ですよ。

信仰というのは、「信じて仰ぎ見る」と書きますね。仰ぐという漢字は、仰向けに寝転がって空を見上げる様子を表します。上を向く人が「仰」、それを抑えつける手が「抑」というわけです。

信仰の道を行くことを、「求道」とも言いますね。仰向けに寝転がって空を見上げて、大きな宇宙とのつながりを思い出すように、自分が何を見上げて何の中で生きるかを考えるということは、すごく時間がかかるし、精神力も使う道です。

仰向けに寝転がって見えた空が広すぎてこわくなった人は、誰かに抑えてもらいたがります。自分という存在が不確かでどっかに行っちゃいそうで、不安だからです。

「わたしはLGBTなのでしょうか?」
「わたしの子どもはなぜ同性を好きになってしまったのですか?」

インスタントな答えを求めて、誰かにすがる。誰かを仰ぐ。気づけば、誰かに抑えつけられている……。

「知ってますか? 国際的にはこうですよ!」
「見えてしまいました。あなたの魂はこうです!」

誰かを仰ぎ見てばかり。誰かに抑えつけられて。

なんかのスピリチュアルカウンセラーを信じることも、「LGBTは人口の何%いて生まれつきで変えられないものです」と信じることも、わたしは、それぞれの信仰の自由の範囲にあることだと思っています。それで楽になるなら信じてもいい。けど、それで苦しいなら、信じさせられる義理はありません。あなたを抑えるものをどかして、その向こうの空を仰ぎ見ればいい。

6年間この連載を書いてきて、ずっと、怖かったです。わたしが、わたし自身が、仰ぐ人を抑えてしまってはいないだろうかと。

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

s_yut 本題からずれるけど「親から紹介されたスピリチュアルカウンセラー」がもう、話聞きたくなさMAX 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

s_minamino |牧村朝子 @makimuuuuuu |ハッピーエンドに殺されない こないだ読んだこれ https://t.co/wLEwlXPVNp 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

famptmgmg 涙が。 https://t.co/yADYyL7dvA 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

see_na 牧村朝子 @makimuuuuuu | >人に何かを言われたとき、「それが正しいかどうか」の前に、「なぜその立場からそういうことを言うのか」を考えるようにな… https://t.co/VEGJHyDYNh 約2ヶ月前 replyretweetfavorite