2月の終わりの話。
ててててっ ててててっ ててててー
I have a pen. I have an apple. あぉんっ Applepen!
『SARA錦糸町』の505号室で、裸になってからというもの、私の頭の中では、ピコ太郎のPPAPがずっと流れ続けている。といっても、まだ3周目だけど。「私、いま、ピコ太郎のことを考えている」と言うと、同じく裸になって、学校用の木製の椅子に座っている私の恋人は怪訝な顔をした。
「どうして?」彼が聞き返すのは当然だ。この部屋を見渡しても、黄色い豹柄や薄いサングラスみたいなピコ太郎を連想させるものなんて一つもない。だから当然、私だって、ピコ太郎の容姿を思い出したわけじゃあない。
ただ、ピコ太郎がPPAPを歌う時の喘ぎ声が突然、聞こえたのだ。あぉんっ。ペンとりんごをくっつける時、漏れる、低いため息。ペンとリンゴを結合させるには、強い力が必要だ。なぜなら、ペンとリンゴは普通くっつくはずのものではないからだ。くっつくはずのないものを無理やりくっつけようとする時、人は力まなければいけない。その時に、弾みで、あぉんっという喘ぎ声が出るのだ。
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