「まだロジカルシンキグとか言ってるの? 今はデザイン思考の時代だよ」
「反論しにくい空気を作る」屁理屈のひとつに「新しさに訴える論証」というものがあります。
このネーミングだけで、「いるいる」とか「あるある」となった方も多いでしょう。そう、皆さんの近くにも必ずいる、「それって古いよね」とか「今は○○の時代だよ」が口癖で「新しいものに敏感な自分カッコイイ」とマウンティングしてくる人。そうした人が常用しているのが、この「新しさに訴える論証」です。
今さらかもしれませんが、具体例を挙げましょう。私は「思考力」が専門分野の一つであり、研修などではロジカルシンキング、つまり論理思考もコンテンツとして教えることがあります。しかしあるとき、こう言ってくる人がいました。
「まだロジカルシンキグとか言ってるの? 今はデザイン思考の時代だよ」
これは私の想像ですが、こういうことを言う人が、新型のiPhoneを徹夜で並んで買うタイプなのかもしれません。実のところ、iPhoneがこれだけ売れているのは日本だけなのですが。
ともあれ、これが典型的な「新しさに訴える論証」です。確かにデザイン思考は今までにない発想を生むためには有効な思考法ですが、そのキモは「頭の中の言葉だけでなく、絵や図を描き、それを修正(試行錯誤)しながら考える」ことであり、それ自体は私も含め多くの方がすでに取り入れていた思考法です。ネーミングが新しいだけで、今まで誰もやっていなかった、まったく新たな思考法ではありません。もっと言えば、それも広義では論理思考、ロジカルシンキングに包含されます。(本書でも、「直感や勘を含めて、そもそも思考はすべて論理的」と言いましたよね)
しかし、こうした「新しい(名前の)思考法」に飛びつく人が多いのが現実です。他にも「ブルーオーシャン戦略」や「ゼロイチ思考」など、「新しさに訴える論証」でお金儲けをしようとする(もちろんそれを否定はしません)人々のなんと多いことでしょうか。
これは思考法の領域だけに限りません。FacebookやTwitter、そしてInstagramといったSNSに加え、雑誌やテレビなどでは、さまざまな「新しさに訴える論証」が蔓延しています。
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