これからの恋愛は「待つ」が大事になるかもしれない

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。森さんは、スピード感に支配されていた世界が転換期を迎えているのでは?と考えます。コロナ禍が続く今だからこそスピードを落とし、「待つ」ことと向き合ってみてはいかがでしょうか。

相変わらずコロナ禍が続いていて、終息を望むより新しい日常に慣れていくしかないのではないかと、ひらきなおりにも近いあきらめモードになっている人は私だけではあるまい。さわやかなあきらめと言おうか、世間もそういう流れになってきている。芸能人がいきなり引退したり移籍したり、独立して新たなビジネスに参入したり。芸能人でなくとも、友人関係や仕事を整理した人はいるだろう。

スピード感に支配されていた世界は転換期を迎えている

先日、TicTokの使用制限を日本政府が検討しているというニュースが話題になったが、スピード感に支配されていた世界は転換期を迎えているように思う。立ち止まって考える、思う、待つ。これからはネット検索ではなく自分で考えて自分の意思だけで決めることも重要な時代になるのではないか。私達は情報や人(見えない人)に惑わされてきた。みんなが言っているから、の「みんな」はいないに等しかったのに。

なぜ恋愛するのだろう、なぜ結婚するのだろう。自分の原点を無視して、みんなや世間がそうだから、ネットがそう言っているから、と行動してきた人のなんと多いことか。それこそスピード競技のように出会いと別れを繰り返している人は、本当には恋人を求めていないのかもしれない。何かを求めていないと不安に陥るから、不安に陥った自分を見つめたくないから、異性や好きになってくれそうな誰かを欲する。

最近の方は恋人を作らない人も増えていて、セックスする人、食事をする人、買い物をする人、と必要に応じて使い分けているのだという。便利だな、と思いこそすれ、隙間風のようなさみしさも覚える。人に対する熱量って、過ごした時間にも値するのではないかと思うからだ。過ごした時間と、過ごしたい時間。

インスタントにセックスするならやっぱりあの人!と型にはめるのもいいけれど(なかなか相性のいい人と巡り合う確率も少ないし)、長い時間をかけて作り上げた不器用なセックスというのも、味わいがあるかもしれないよ。将棋のようにじりじり詰めて触れ合って達成(王手)みたいなセックスね。

3時間も待てない人

20年以上前になるだろうか、友人から「片思い相手の男からメールの返信がこない」と相談を受けた。どのくらい待ったの?と聞けば「3時間」とのこたえ。私は、とりあえず1日待ってみたら、と言ってみた。内心では、たった3時間、仕事をしている社会人なら3時間返信できないのはあたりまえだし、むしろちょくちょく返信がくるほうが心配だ、と驚いた。

まあ、某政治家が不倫相手に1日何百通とLINEを送っていたという事実もあるから、一概には言えないのだが。20年以上前で3時間待てないのなら、現在の基準はどうなのか。1分とか? 1時間返信がなかったらやはりTwitterやインスタなど他のSNSや遠隔アプリを操作するなどして相手の動向を知るのだろうか。

「だって、放っておいたら他の女(男)に行っちゃうから」、人ひとりを把握しておきたいのだろうか。はっきり言って、無理! 一連の行動が無理なのではなく、人ひとりを把握するのは無理なのだ。把握しようとすればするほど、知ろうとすればするほど、離れていく。人は誰のものにもならないのだ。そして、人をがんじがらめにしようとするあなたの行動が、あなた自身をがんじがらめにして、自分を失わせる。あなたの中のあなたがいなくなってしまうのだ。個性というもの、というべきか。

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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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