ホッピーをもとめて
東京から大阪に引っ越してきて困ったのが、居酒屋にホッピーが置かれていないことだ。東京の大衆酒場ではホッピーばかり飲んでいたので、大阪にあまり普及していないことを知って寂しい気持ちになった。
とはいえ、最近(2020年時点)の大阪には以前に比べてホッピーを扱うお店が増えてきていて、梅田エリア、難波エリアなどでちょっと凝ったお酒やおつまみを出す立ち飲みなんかをのぞくとメニューにその名が見つかったりする。
特に大衆酒場ブーム以降、三重県の酒類メーカー・宮崎本店の「キンミヤ焼酎」が割り材を選ばぬ使い勝手のいい甲類焼酎として注目を集め、関西方面へも普及し出したのが大きい気がしている。キンミヤ焼酎を扱う店であれば、キンミヤ焼酎とホッピーとの相性のよさも目に入り、セットで提供するようになる、というような流れがありそうだ。
私の住まいの近くに大型のリカーショップがあるのだが、大阪に越してきた当初の2014年頃は、ホッピー自体は販売されていたものの、キンミヤ焼酎を取り扱っておらず、ホッピーはそこで買い、キンミヤ焼酎は別に通販で買って、ようやく家で正真正銘のホッピーが飲めた。やはり、ホッピーにはキンミヤ焼酎をあわせないと完璧な美味しさにならないように思う。
前述の通り、そんな状況も徐々に変わってきつつあり、大阪でもホッピーが飲める店がちらほら増えてきてはいるのだが、ホッピーを美味しく飲ませることに労力を割いている店までとなるとなかなか見つからない。私はお酒全般に関して、かなりルーズ、よく言えば柔軟な方で、どんなお酒がどんな風に提供されようと、お酒でありさえすればありがたいと思うのだが、ホッピーだけはいわゆる“三冷”で飲むのがやっぱり美味しいと思ってしまう。
ホッピー自体を冷やし、キンミヤ焼酎も冷やし、ジョッキも冷蔵庫で冷やして、氷を入れずに割るスタイル。氷が入るとホッピーが薄まってしまい、なんだかビールがしゃばしゃばになったような心細い味わいになってしまう。いや、氷で薄まったホッピーもそれはそれで好きだし、ちょっとぬるめのホッピーにも味わいがあったりするのだが、一番美味しい飲み方となると、その“三冷”のキンキンに冷えたやつだろう。
"三冷"のホッピー
しかし、ホッピーを美味しく飲ませるためだけにホッピーの瓶とキンミヤ焼酎とジョッキを冷やしておくということはお店にとって煩わしいことだろう。そんなことをお店に求めるのはわがままだ。「いいんだ、東京にたまに行った時にそういう店を探してキンキンのホッピーを飲めばいいんだし……」とあきらめかけていたその時、出会ったのが淀屋橋の江戸幸だった。
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