第1章 見えない檻から飛び出そう vol.2 損なわれた居場所を求めて

小学校ではダントツの成績を誇りながらも問題児扱いされていた堀江貴文さん。居場所を探し情報に飢えて、百科事典をむさぼり読む彼が、「ゼロ」からの一歩を踏み出すことのできたきっかけとは? そこには、人生はじめての理解者との出会いがありました。11月5日(火)に発売される堀江貴文さんの書き下ろし単行本『ゼロ――なにもない自分に小さなイチを足していく』の内容を、cakesでいちはやくお届けしていきます。

(初回を読む)

情報は自らつかみ取るもの

 こうやって両親の話をしていくと、多くの人が首を傾げる。
 うちの両親は、二人とも平凡な高校を卒業した、ごくごく一般的な人たちだ。経済的な事情などはあったのかもしれないが、大学も出ていないし、サラリーマンとしての父は支店勤務の課長どまりだった。自分の親を悪く言うつもりはないけれど、どうひいき目に見積もっても「普通」の人たちである。
 どうしてそんな両親のもとで、僕のような人間が育ったのだろう?
 ……こればかりは、よくわからない。遺伝だとは思えないし、なにかしらの英才教育を受けた覚えもない。むしろ僕の置かれた環境は、最悪に近かった。

 地理的な状況から説明しよう。
 僕の生まれた八女市は、お茶と仏壇、提灯などの特産品で知られる山間部の町である。住人のほとんどが一次産業に従事しており、うちのようなサラリーマン家庭のほうが珍しい。当時は住宅もまばらで、友達の家まで遊びに行くにも、歩いて30分は覚悟しなければならなかった。文化の香りなどあるはずもなく、ただただ肥料の匂いが漂う町だ。
 文化が欠落していたのは、八女の町だけではない。堀江家もまた、文化や教養といった言葉とは無縁の家庭だった。
 たとえば、うちの父は「本」と名のつくものをほとんど読まない。家に書斎がないのはもちろん、まともな本棚もなければ、蔵書さえない。テレビがあれば満足、巨人が勝てば大満足、という人である。
 そんな堀江家にあって、唯一読みごたえのある本といえば、百科事典だった。
 当時は百科事典の訪問販売が盛んで、日本国中の家庭に読まれもしない百科事典が揃えられていた。きっと、百科事典を全巻並べておくことが小さなステータスシンボルだったのだろう。わが堀江家も、その例外ではなかったわけだ。
 そこで小学校時代、僕はひたすら百科事典を読みふけった。
 事典として、気になる項目を拾い読みしていくのではない。第一巻、つまり「あ行」の1ページ目から、最終巻「わ行」の巻末まで、ひとつの読みものとして通読していくのだ。感覚的には読書するというより、情報から情報へとネットサーフィンしているオタク少年に近いだろう。
 リニアモーターカー、コンピュータ、そしてアポロ宇宙船や銀河系。百科事典には誇張も脚色もない。映画や漫画で見てきたような話が、淡々とした論理の言葉で紹介されている。星の名前も国の名前も、遠い昔の国王も、すべて百科事典で覚えた。ページをめくるたびに新たな発見があり、知的好奇心が刺激されていった。インターネットも携帯電話もない時代。僕にとっての百科事典は、社会に開かれた扉だったのだ。

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ゼロ—なにもない自分に小さなイチを足していく

堀江貴文

「誰もがゼロからスタートする。失敗してもゼロに戻るだけで、決してマイナスにはならない。だから一歩を踏み出すことを躊躇せず、前へ進もう」――なぜ堀江貴文さんは、逮捕されてすべてを失っても希望を捨てないのか?  彼の思想のコア部分をつづる...もっと読む

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imo1129 この本を読んでて、文化も教養もない田舎町で山の向こうや海の向こうの世界の情報を求めている堀江さんが、壁の中で壁の外の世界を夢みているアルミンやエレンと似ているなあと思いました。 https://t.co/LVq5MP5AgU 4年弱前 replyretweetfavorite

kktsc なかなか読ませる。 約4年前 replyretweetfavorite

xxjapanxx @hiromi1223 https://t.co/ga3TFjzMg8 これだねー。まだ、読めるのかな?ぜろさんぷる 約4年前 replyretweetfavorite

tarovincent 何言っても、結局天才なんだよね、ホリエモン、羽生さん、イチロー。  約4年前 replyretweetfavorite