大阪市北区・天満「但馬屋」―東京から来た友達を迎えて朝から飲む酒

東京で生まれ育ち、数年前に大阪に転居したライターのスズキナオさんが、大阪をはじめとする味わい深く個性豊かな酒場の数々や酒にまつわるエピソードなどを通じて関西の土地や文化と出会う。『深夜高速バスに100回くらい乗ってわかったこと』も話題の”ウェブライターの真打ち”が満を持して「酒と関西」に向き合います!今回は大阪に数ある酒場のなかでも「いつ行ってもこの店だけは裏切らない」というお店が登場!(毎週水曜・土曜更新)

大阪で最初に親しみを感じた町

私が住んでいる場所から天満までは遠くない。自転車で6分、歩いて20分という感じだろうか。JR天満駅を降りるとすぐそこに天神橋筋商店街という、どこまでも終わらないかのような長いアーケード街がある。私の家から近い端っこの天神橋筋六丁目から一丁目まで、全長はおよそ2.6kmもあるという。

JR天満駅のある五丁目あたりはいつも活気があって、5回行ったら1回はテレビ番組が“町ロケ”をしているのを見かける。テレビカメラを背にした西川きよしとすれ違い、「大阪にいるんだな俺は」としみじみ思ったこともある。このあたりは美味しいものを食べに来た若者と、仕事帰りに飲んでいく会社員と、野菜を買いにきた生活者とがごっちゃに混ざり合っていて、ロケをするのにもうってつけなのだろう。

エリアごとに少しずつ雰囲気も違って、四丁目あたりまで行くとちょっと道幅が広くなって古本屋がちらほらあって、三丁目、二丁目まで行くと生活感が色濃くなり、銭湯があったり、美味しくて有名なコロッケの中村屋の前に人が並んでいたりする。大阪に引っ越してくることが決まった直後、まだ東京に住んでいた頃に私はこの辺りを歩き、それまで大阪と言ったら真っ先に道頓堀のド派手でアッパーな風景が思い浮かぶような自分だったから、もっと隙間があって普通に暮らしている人が歩いているようなこの町の雰囲気にホッとするところがあって、「この近くに暮らしたら楽しいんじゃないか」と思った。

だから天満は私にとって最初に親しみを感じた大阪の町で、とはいえ人通りの多い繁華街ではあるから、中には「あんな騒がしいとこよういかんわ」と言う人もいるかもしれないが、私の住まいからはちょうどいい距離感で、ちょっと歩けばいつでも天満あたりに行ける、と思えることは私の心をちょっと晴れやかなものにしてくれた。

「決まった店」との出会い

実際、大阪に住むようになった自分が「大阪のどの町で一番酒を飲んできたか」と考えたら絶対に天満だと思う。JR天満駅前から天満青物市場を前身とするマーケット「ぷらら天満」あたりにかけては賑やかな店が立ち並び、少し離れると路地裏にひそやかな名店が見つかり、酒めぐりに終わりが見えない。天満に酒を飲みに頻繁に来るようになった当初こそ「よし!片っ端から飲んでいい店を探すぞ!」と意気込んでいたものの、すぐに戦意喪失した。気になる店が多すぎて手に負えないのである。いつしか私は決まった店にばかり行くようになっていた。

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関西酒場のろのろ日記

スズキナオ

東京で生まれ育ち、数年前に大阪に転居したライターのスズキナオさんが、大阪をはじめとする味わい深く個性豊かな酒場の数々や酒にまつわるエピソードなどを通じて関西の土地や文化と出会う。『深夜高速バスに100回くらい乗ってわかったこと』も話題...もっと読む

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ryokikuzaki スズキナオさんによる但馬屋語り。記事の下に〈本連載がまもなく本になります! 関西酒場のろのろ日記 (ele-king books)〉とあって、またナオさんの本が出るのか!あと2年くらいで村上春樹の長編本数を超えるな!と思った。 https://t.co/lfJlyYKUTs 4ヶ月前 replyretweetfavorite

bako 天満いいよな、、 https://t.co/4kIzuHN72d 4ヶ月前 replyretweetfavorite

chiruko_t 気になってるお店。 4ヶ月前 replyretweetfavorite

jumbo762 但馬屋は私も贔屓にしていたので結構嬉しい。 4ヶ月前 replyretweetfavorite